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【2025/06/17 07:20 】 |
びこう

「ね・・・ねえ、やっぱり、やめようよ」
前ゆく2人に小さく声をかけると、くりんと長い髪をなびかせて
翔子が振り返り強く言った。
「何言ってんのここまで来て! 深津も知りたいでしょ?!」
目が爛々と輝いている。
深津のためというより自分の好奇心を満たすためだと
はっきり解ったが深津には言い返すことはできなかった。
「諦めろ深津。気になることは気になるんだろ」
翔子の隣に並んだ辰彦にも言われ、深津は頷くような頷かないような
曖昧な角度で顔を傾ける。

航太郎が週に何度か、学校が終わると急ぐようにどこかへ
向かうのは知っていた。
深津の視線は気付くと航太郎を追っているのだ。
それに気付いた辰彦も航太郎の行動に興味を覚えた。
さらに航太郎を直接知らない翔子が目を輝かせ、3人で帰っている
途中でどこかへ向かう航太郎を見かけたものだから後をつけ始めた
――わけなのだが、正直深津には不安でいっぱいで何度も
止めようと声をかけた。
航太郎のことは気になる。
後を付けた、なんて本人に知られたら怒られるかもしれないし、
最悪軽蔑されて嫌われるかもしれない。
それだけは嫌だった。
しかし気になる。
どこへ行くのか、誰と会うのか。
もしかして彼女と待ち合わせているのか――そうだとしたら
さらにショックを受ける。
でも現実を知って傷を受けるなら早い方が楽になる。
鬱々とそんなことを考えながらなのではっきりと止めることも
出来ず、ただ深津は楽しそうに航太郎を追う2人に付いて
いくしかなかったのだ。

人ごみにこそこそと隠れながら、駅前に近い映画館へと
航太郎が入っていく。
「映画?」
「待ち合わせかな」
「一人で見る趣味はないだろ」
「デートかな!」
「野郎とじゃないだろーなー」
辰彦と翔子が楽しそうに会話する中、深津はそれに
酷く打ちのめされたように沈んでいった。
顔が泣きそうに歪んでいるのも解かる。
解かっていたけど。
航太郎がもてて、当然彼女くらいいるだろうとも
解かっていたけど。
自分がどう出来るとも思ってもいないけど。
それでも、深津は落ち込んだのだ。
そんな深津に翔子は楽しそうに振り返り、
「もーそんな顔しないでよ! せっかくの可愛い顔が
台無しよ!」
「そうそう、ほんとに一人で映画、なんて寂しい趣味
持ってるだけかもしれないだろ」
慰めてくれているのかもしれないが、友人たちは
とっても楽しそうだ。
「べ、別に、一人で映画見たって、寂しい趣味とかじゃ
ないと思うし・・・」
誰かが航太郎のことについて、貶めるようなことを
言うとつい深津は反論したくなってくる。
どんな趣味だって航太郎ならいいと思う。
どんな面を見たって、深津の気持ちは変わらないのだから。
言い返した深津に、2人はさらに楽しそうになった。
「まー寂しくはないけどー」
「でもあれかもよ? ほら丁度アニメも上映してるよ?」
「あーこのアニメかーそれをひとりでこっそり見に来てるわけだ?」
「つまり航太郎先輩は、オタクな人ってこと?」
「そうなるな」
「えー! へーえ! そう! そんな感じしないのにねー」
「人は見かけによらないって言うだろ」
「そうだねーオタクな人かー部屋にポスターとか貼ってあるのかしら?」
「かもな。しかも超巨大なやつ」
「うわあーそれを毎日ひとりで見てニヤニヤしてるんだ!」
「あー想像したらこえーな。しかしあの先輩にそんな趣味がねー」
「これは深津も考えものよねっどうする?!」
「ど、ど、どうって、どうって、なに、が?!」
勢いよく2人は呼吸もテンポも合って話すので、深津は反論しようにも
口を挟む隙がない。
さらにそんな質問をされても、どう答えたらいいのかも解からない。
「だからぁ、航太郎先輩がオタクだった場合、よ」
「そうだぞ。オタクの先輩だぞ?」
2人が楽しそうに、しかし真剣に深津に詰め寄った瞬間、低い声が響いた。

「誰がオタクだって?」

驚いて、勢いよく振り返るとそこに件の先輩――航太郎が青筋を
立てるような無気味な笑みで立っていた。
「あっれ、先輩、グーゼンっすねー!」
辰彦が今までの会話などなかったように声を返すが、航太郎は
じろりと睨み、
「人のあと付けるようなヤツに趣味がどうとか言われたくないぞ」
「あれ、気付いてました?」
ははは、と笑ってごまかす辰彦に、航太郎は当然だ、と息を吐く。
「あんなへたくそな尾行に気づかないはずないだろう。時間が
なかったんで放っておいただけだ」
しかも映画館につけば声を抑えるでもなく大声で話しているのだ。
「ナニに急いでたんすか?」
「バイトだよ。ここでモギリのバイトしてんだよ」
「あーなるほど」
「こっちの子はお前の彼女か? 前に言ってた」
「そうですけど」
「こんにちは初めまして、東翔子です」
翔子は可愛らしい顔を最大限に生かしにっこりとほほ笑むが、
先ほどの会話を聞いてしまった航太郎はその下にあるものを
見抜いて苦笑するしかない。
「どうも、木崎です・・・つか辰彦、お前もどうなんだよ。S講館の
彼女ってどんな手を使ったんだ?」
「ちょっと先輩、失礼ですよ。まぁS講館の彼女ってか、彼女が
S講館に入ったっつーか」
S講館は地元どころか県下でも上位に入る超絶進学校だった。
その制服を着ている翔子は普通の学ランを着ている辰彦や
深津より目立つ。
「話には聞いてましたけど、すんごく爽やかな先輩だね」
「俺も話には聞いてたけど、想像してたより面白い子だね」
翔子と航太郎が裏のありそうな笑顔で笑い合う。
「しかしひとのあと付けて勝手な想像してお前らも暇だな」
「いや、暇ってわけじゃないですけど」
「楽しそうだったからー。ね、深津?」
「う、えっ?!」
それまで会話に入ることなく慌ただしく流れる周囲に付いてもいけず
呆然としていた深津は突然振られ、焦った顔で口を開閉させた。
「長谷川、普通に漫画くらい読むけど、べつにオタクじゃないぞ、俺」
どこか困ったような、それでいて真剣な顔で言われて、深津は
何を言うこともできず、ただ何度も頷いた。
そんなこと、解っている。
いや、どうだっていい。
航太郎が航太郎であるなら、深津は何だって受け入れられる。
しかしそんなことを思った自分に恥ずかしくなり、深津はますます
顔を赤くして、俯くしかないのだった。
「長谷川?」
どうしたんだ、と首を傾げる航太郎の側で、友人2人が面白そうに
笑っていた。


*****

再び勢いで書きました。
高校生の深津も大人の深津もかわんねーなー(笑
ただ、初めて書きました、翔子ちゃん。
辰彦の彼女です。
いつか中学生編を書いてちゃんと登場させたいです。

お盆休み目前にして、なんだかとっても体力がないです。
すでにヘロヘロっつーか気持ち悪いっつーか。
あー治まりかけてた夏バテ復活っつーか。
昼にくったカラアゲがトドメだったっつーか。
まめにおいしい野菜料理のお店に連れてってもらって
回復したいです。
楽しみだ。


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【2011/08/11 08:57 】 | ウツムキスマイル | 有り難いご意見(2) | トラックバック()
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有り難いご意見
無題
オタク駄目ですか…(゚_゚;)
【2011/08/14 00:00】| | 秋葉優 #7fe02eb2e7 [ 編集 ]


いんじゃないすか。
オタク(笑

深津は気にしません(笑
【2011/08/14 17:24】| | 秋野真珠 #56ae1b9819 [ 編集 ]


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