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【2024/05/19 02:24 】 |
警鐘
これは警告だ。
頭の中で鳴り響いた音は重く、深く、はっきりと感じているのに、
周囲の誰もそれに気づいてないことが不思議だった。
何故、誰も警戒しない。
おかしいと思わない。
夏流は人生において、これほど不可思議に感じることはないだろうと思った。
それにしても、他の誰もが気付かなくても、唯一の幼馴染である洋平だけは、解かるだろうに。
そう思ったのに、洋平の顔をみて、また気付いてしまった。
洋平も、解かっている。
解かっていて、止められないからそんな顔をしているのだ。
夏流は勘が良かった。
しかし勘が良くて良かったなどと思ったことは一度もない。
むしろ鈍ければ、こんなにも世界の歪さに気付くことなく、楽な人生だっただろうと思う。
どうして自分にこんなものを与えたのか。
欲しいと願ったわけではない。
傲慢な思考だと思われても、それは夏流でないものには理解できない願いだった。
頭の中に警鐘が鳴り響く。
これは駄目だ、とはっきり告げる。
この男を目の前にしたとき、夏流は確かに感じた。
今の夏流が、欲しくてたまらないものを、あっさりと手にしてしまえる男だ。
夏流が手放したくないものを、奪っていく男だ。
子供のように駄々を捏ねて、それで済むのならいくらでも子供になる。
その男の傍にいることが、今までの人生を全て変えてしまうと解かっているのに、
止められないということが解かって、夏流は虚しく響くだけの警鐘の中で時間を止めてしまった。
それが、夏流が紀一という男にあったときの全てだった。
 
煩く響く警鐘だけがのこり、煩わしくなって顔を顰めた。
そこで目が覚めた。
まだ暗い部屋を見て、眠れないことに苛々とする。
 
「夏流が、紀一さんを嫌いなだけじゃん」
 
そうあっさり言った子供は、今は隣で布団に包り安眠中だ。
嫌いなだけだ。
嫌いなのだ。
それ以外に、何ものにもならない。
そう解かっているのに、この子供はあっさりと紀一の傍に近づく。
一度は落ち着いた警鐘が、また頭に響いた。
夏流がこれほど態度をはっきりさせているのに、いつまで経っても夏流を理解しない。
やはり、鈍いということが羨ましくなる。
夏流が身体を起こすと、隣にいた身体が少し唸って背を向けた。
まだ成長途中の筋肉がついただけの、細い背中が見えた。
それを見ても、眠れない苛々が落ち着くわけではない。
夏流は腕を掴んでもう一度仰向けにさせた身体を、じっくりと確かめた。
数えきれないほどの、自分の痕跡が残る身体だ。
これだけマーキングされていれば、自覚もしようというものなのに、この子供だけは自覚をしない。
肌をもう一度なぞり、顔を寄せた。
そして機嫌の悪さを逆手に取った、甘い声を囁く。
この顔と、この声に、この子供が弱いというのなら、夏流はどんな手を使ってでも、
腕の中に捕まえておくつもりだった。
今更、どんなに嫌だと言われても止めるつもりはない。
それがこの警鐘を気にしない、鈍い子供の報いだと夏流は笑った。
 


*****

なんとなくの勢いです。
寝てるとこたたき起こされた貴弘バージョンも書きたいです(笑

最近、花粉症が復活したよううだ。
まぁ出る日と出ない日があるんじゃけども。
くしゃみはおいといても、それよりも目がまた痛くなったほうが気になる。
右目の下まぶた。
瞬きするたびに痛いので、どうにかしたい・・・・
先輩のいる薬局に相談したら、地元の総合病院(ジジババ専用)の、
眼科は良いらしい。
良い先生らしい。
信用できる言葉を薬剤師さんにいただいた。
「他から来よる先生じゃけん」
・・・これ以上信用できる言葉があろうか!!
来週、まだ痛ければ行ってみようと思います。
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【2012/03/31 12:59 】 | SS | 有り難いご意見(0)
Trick or Treat
「トリック オア トリート!!」

10月31日。
帰宅した犬養を迎えたのは、オレンジ色のマントをして
両手を広げ、全開の笑顔のキナだった。
足元にはキナの予想通り大型犬ほどに成長した
クリーム色の犬が先のとがった黒い帽子を付けて
見上げている。
一瞬ドアを開けたまま動きを止めたものの、犬養は
玄関に入るとジャケットの内ポケットを探った。
3センチ角ほどの小さな梱包された箱を、キナの広げられた
手の上に載せてやる。
「・・・え? ええ?」
両手でそれを受取って、待ちかまえていたキナが驚いた
顔をした。
恐らく、犬養が何も持っていない――というよりこの行事を
知らない――と踏んで悪戯を考えていたのだろう。
手に残ったちょっと高そうな包装の箱と、リビングに入っていく
犬養の背中を見比べて、キナも慌てて後を追う。
「あー、あの、犬養さん?」
「なんだ? お菓子が欲しかったんじゃないのか」
「そ・・・そうだけど」
そうじゃない。
とはキナには言えない。
キナの掌にも治まるそれを見ていると、複雑になりながらも
顔が緩んでしまうのが解かる。
悪戯してみたかった、と考えていたことは薄れ、気持がふわふわと
して嬉しくなる。
「キナ」
そんなときに呼ばれ、顔を上げると犬養はジャケットをソファの背に
掛けてネクタイに指を入れていた。
そして振り返りながら、言ったのだ。
「Trick or Treat」
「・・・・・・・えっ」
驚くほど綺麗で流暢な声だった。
その意味をはっきりと理解するまで、日本人のキナは少し考えた
ほどだ。
しかし理解して、さらに驚く。
頭が真っ白だった。
キナを見つめる犬養と、手の上の箱を見比べて、動揺する。
悪戯をすることだけを考えて、自分がお菓子を用意するなどと
いうことはまったく考えていなかったのだ。
「何もないのか」
「あ、あー、えーっとっ」
何もない、という答えは犬養にも予想が付いていた。
「じゃあ悪戯していいんだな」
「あ、あの、ええとーっ」
戸惑ってうろたえるキナの身体を抱きよせ、顔を覗き込んだ。
「ま、まって犬養さんっ悪戯ってなにするの?」
「先に言ったら悪戯にならないだろう」
それはそうだ。
キナも納得しかけたが、なんだか背中に回る手がひどく
甘さを持っていてどんな悪戯なのか怖いようで期待して
しまう。
「ここでしても?」
顔を近づけてくる犬養に、キナはくしゃりと泣きそうな顔になった。
「・・・だめ。ここじゃ、やだ」
「ならベッドだな」
「うー・・・」
犬養はキナを抱えるようにして、足元で大人しくしていた犬に
待っていろ、と飼い主らしく告げた。
この家で一番賢い犬は、その通りにするだろう。
「い、犬養さんのばかっ」
寝室のドアが閉まる前に、キナの怒ったような声が聞こえた。
「そんなに期待されるなら答えないとな」
からかうような犬養の声が聞こえて、ドアが閉まった。
頭に帽子をかぶせられたままの犬は、リビングのラグの上に
丸まりあのドアがもう一度開くまでゆっくりと待つことにした。


******

思いつきです。
ええと、拍手にコメントくださったかた、ありがとうございます!
なのでハロウィンはキナと犬養さんでした。
何故犬養さんがお菓子を持っていたのか?
そんな裏話も今度書いてみたいです。
これからもうちの子たちをよろしくお願いいたします!

近況。
寒いです。
寒いです。
背中に思わずカイロを貼っちゃいましたよ。今日は。
冬になるなぁ。
雪山行きたいなー

【2011/10/26 12:43 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
普通の男の初恋と失恋 3
バーはビルの1階で、入り口はドアにかかる看板一つが
ライトに照らされているだけだった。
僕一人なら店だと気付くこともなかっただろう。
濃い木目の看板に、「ネム」とだけ書いてある。
ドアを開けると、カラリとドアベルが鳴った。
最近聞かない音に、僕は小さく笑った。
「いらっしゃいませ、春則さん。お待ちかねですよ」
「悪い、途中でちょっとな」
店内は広くない。
入り口からすべて見渡せる。
カウンタの奥にバーテンが一人と、ソファ席が2つ。
客も多くないし、むしろ多かったら大変だろう。
ここまで春則に手を引かれていた僕は、バーテンが声をかけた春則が
空いた手を上げて誰かに謝ったとき、足が止まるほど驚いた。
「――村瀬、さん・・・」
小さくこぼれた声は春則にも届いたらしく、僕を振り返りそして
カウンタに座っていた村瀬を見返し、「知り合い?」と聞いた。
「まぁな」
村瀬は少し驚いただけで、すぐに表情を戻し口端を上げるようにして笑った。
とても人が悪く見えるのに、とても格好良く見えてしまうのは村瀬だからだと思う。
「それで、ナンパをしていて遅くなったのか」
「まぁね。あ、マスター俺モスコ。ヨシユキは?」
春則に手を引かれるままカウンタに座った僕は、
まだ動揺しながら「ジントニック」と言えた。
「大丈夫か?」
春則の向こうから、村瀬が僕を見ていた。
「顔が赤い。飲んでいいのか」
「あ・・・えっと」
それは、春則が僕の手をずっと握っているからだ。
告げると、春則は悪びれることもなく笑う。
「だって手がキモチイイんだよ」
「節操ないな」
「ロクデナシに言われたくないね」
村瀬の一言にも春則はあっさりと返す。
言葉だけはとても辛辣なのに、その口調も声も、あっさりとしていて、
羨ましく思える何かを僕は感じた。
「あの・・・お二人は、付き合ってるんですか?」
口にして、自分が一番驚いていた。
春則は少し首を傾けただけで、村瀬は聞こえていたはずなのに反応がない。
「そう見える?」
春則に笑われて、僕は焦った。
「いえ、その、なんとなく、勝手に・・・すみません」
「お前がが謝ることじゃないだろ」
何の反応もなかった村瀬の言葉は、ついさっきも聞いた気がした。
「ヨシユキはこーゆうとこ初めてなんだよ。でもレーズンに
行こうとしてたからさーこっちに連れて来ちゃったよ」
「ああ」
村瀬も知っている店なのか、ただ頷いた。
「これからは、一人でもここに来るといいよ。みんなイイヤツだし、マスターが美人だ」
改めてカウンタの中を見ると、バーテンはマスターらしく確かに綺麗な人だった。
優しそうに微笑まれて、僕は本当にここに通うだろうと思った。
何のきっかけがあったのか、村瀬が先にスツールから立ち上がった。
それに少し置いて、春則も立ち上がる。
「悪い、これから用があるんだ。先に帰るけど」
「あ・・・はい」
すごく寂しい気持ちになるのは、一人カウンタに残されたからじゃない。
春則は笑顔で僕の肩を軽く叩いたが、村瀬は顔を寄せ、
目を離せなくなるような顔で笑った。
「内緒だぞ、与之幸」
名前を呼ばれたのも、2回目だった。
固まった僕が息を吹き返したのは、二人がドアを出て行った後だ。
 
結局彼らは付き合っているのかいないのか。
わからないままだ。
でももう、聞くことはできないだろう。
僕は2回振られた気持ちになっていた。
だけど、胸の中は喜びと期待に震えていて、爽快感がいっぱいだった。
これを失恋というのなら、恋をしたというのなら、
僕は誰かを好きになってみたいと思った。
 
僕がネムの常連となったのは、それから一ヶ月もかからなかった。


*****

ちらちら出てくるくらいの二人が好きです。
これからもちらちら出てきます(笑
よろしくお願いします。

そして与之幸くん。
知り合いの名前だが珍しい漢字だったので使ってみました(笑
きっと幸せになるからいいよね。
与之幸は、そうだなー年下の、大学生とかとくっつくといい。
ちょっとスレた感じの子で。
不器用にでも可愛く恋愛するといい。
最初にするときに、攻受を楽しく決めてほしい。
「だって初めてだから、そんなの出来ない」
とか与之幸が拒む。けど相手の子も逆らう。
「俺だってしたことねぇよ。でもあんた男に挿れたことあんの」
とか突っかかればいい。
「ないけど・・・」
「俺はあるよ。俺のが経験者じゃん」
てゆって押しきればいい。
慣れてない二人の感じがたまらん。
あー楽しい。

てゆうことに花を咲かせてる場合ではなく。
私も勉強しよ。
今日の仕事はここで終わりです。
あでゅー。
【2011/10/02 12:12 】 | SS | 有り難いご意見(1) | トラックバック()
普通の男の初恋と失恋 2
普通の仕事をして、誰から喜ばれることもない日常業務だと思っていた。
だけど僕は、村瀬から褒められたことでひとつ勇気を貰った。
今まで、28年生きてきて、一度も持てなかった勇気だ。
何故か今なら大丈夫な気がした。
僕はゲイだ。
しかし会社も友人も、誰も知らない。
当然だ。
ずっとずっと、普通の男に見えるよう細心の注意を払ってきた。
学生の頃、女の子と付き合っていても同性のほうが気になった。
そこでようやく、僕は自分の性癖に気付いたのだ。
それ以来誰かと付き合ったことはない。
なにしろ、自分と同じ性癖の人と会ったことがない。
友達は友達で、僕の中で恋に移行することがなかったから
相手が本当にいなかったのだ。
僕の相談相手はネットの中だけだった。
ゲイサイトのひとつに僕は登録して、そこの中の彼らからいろんな情報を貰う。
彼らはとてもいい人ばかりで、いろんなことを教えてくれるけど、
実際に僕を動かす力にはならない。
そんな僕が今、決心して立っているのは僕のような性癖の人間が集うという場所だ。
それだけで、緊張する。
確かに男が多くて、誰もかれもそう見えるけど、だから僕にどうにかできるはずもない。
僕はポケットの中からメモを取り出し、場所を確認した。
ネット仲間に教えてもらった、行きつけの店だ。
「レーズン」という店に行ってどうするかはまだわからないけど、
行ってみようと思うことが出来た。
僕はそれだけでここにいる。
夜も深く、周りはネオンと人混みだけだ。
どっちだっけ、と周りを見渡したところで、背中にどん、と衝撃を受けて
弾みで手の中からメモが落ちる。
「ごめん!」
僕が振り向くより拾うより早く、誰かが僕の前に屈みこんでメモを取った。
「悪い、ちょっとケータイ見てて」
余所見していた、と謝りながら笑う男の人に、僕はすごく驚いた。
何しろ、村瀬の格好よさにも驚いたが、目の前の彼もとても素敵な人だったからだ。
「ごめん・・・大丈夫か? どっか痛めた?」
驚いて反応のなかった僕を覗き込むようにされて、僕は慌てて一歩下がる。
「いえ! あの、大丈夫です、すみません」
「君が謝ることはないだろ?」
そう言って笑う彼はとても魅力的だ。
彼には老若男女関係なく落ちるに違いない。
「いいえ、あの、ぼうっとしていたので」
「こんなとこでぼうっとしてるとその辺に引っ張り込まれるぞ。この店に行きたいの?」
彼は物騒なことをサラリと言って、メモと僕を見比べた。
頷くと、彼は少し考えた。
「こうゆうとこ、初めて?」
「え?」
どうしてわかるんだろうか。
キョドってるのがわかったのだろうか。
「誰かと寝たい?」
「・・・ええ?」
はっきり言われたことに、さらに驚くと、彼は頷き僕の手を取った。
「違うなら、この店は止めたほうがいい。客筋は悪くないけど、
その日の相手を探すヤツが多い」
「・・・はぁ」
そういう店が本当にあることにも驚きだ。
しかし、取られた手のほうがもっと気になる。
だけど僕には振り払うということは思い浮かばない。
「いい店があるよ。これから俺も行くんだけど」
「あの」
「普通のゲイバーだったんだけど、いつの間にか常連専用ってか、
一見お断りになったんだよなー。だから安心して、あ、名前なに?」
「お・・・岡、与之幸です」
僕は答えるだけだった。
彼に腕を取られているとはいえ、付いて行かないという選択肢は
僕の中のどこにもなかった。
「俺は春則。よろしく、ヨシユキ」
彼の名前がわかって、僕はすごく嬉しくなった。



*****

もういっこ続きます。
まぁここで終わってもやーよね。
ガンバレヨシユキ。
君の未来は・・・とりあえず、タイトル通りだ(笑

このはっきりしない天気がやーです。
もう湿気がや。
話し始めて終わらないおっさんもや。
私は次の現場に行きたいのよ!
と何度も帰りを促すのにどうして話を辞めないの。
戻すの。
ねぇループしてるよ。
おっさん気付いてよ!
はーこれも仕事・・・でも日照時間も稼働時間も
決まってるんだから頼むよ。

【2011/09/30 12:24 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
普通の男の初恋と失恋 1
「経理の岡という人は?」
大きな声ではなかったのに、柔らかな声はフロアに響いた。
総務部に入ったところにあるカウンタの向こうに現れた社員を、全員が見た。
注目を浴びたというのに、彼は全く驚きも動揺もしなかった。
スーツの胸元に下がる社員証を見なくても、誰だかわかった。
彼が知らない社員は大勢いるだろうが、彼を知らない社員はいないだろう。
海外事業部第二営業部課長、村瀬繕。
こんなに近くで見るのは初めてで、噂以上に格好良くて僕はドキドキした。
経理部の同僚たちの、羨ましそうな視線を受けながら近づいたのは、僕が岡だからだ。
「君か」
「はい」
何の用事か聞き返せず、ただ返事のみで終わったのは
確認して笑った村瀬に赤面しそうだったからだ。
必死で堪えると、短い返事になった。
そんな僕を気にするでもなく、村瀬は要件を言った。
「先週うちの部長の無茶な領収書を処理してくれただろう?」
「ああ」
僕は思い出して、村瀬が来た理由もわかった。
先週、彼のいう部長から回ってきた領収書は金額が高く、
普通に経費として処理するには難しいものだった。
ただ、入社してから総務の中にいる僕は、その回避方法をいくつか知っていた。
何度もあるようなら僕も受け入れはしないが、かの部長は初めてだった。
「悪かった。いつもならあんなものは出さないようにするんだが、
先週は俺もほかに解る奴も丁度出張でいなかったんだ」
営業部の接待費は様々だ。
時折高額にもなるが、彼らは経理に回る前に処理を知っている
しかし稀に、金額の高いものが回されてくる。
彼ら曰く、出さないように出来なかったものだ。
村瀬は正直に謝りながら真剣で、領収書一枚を処理することが
どれだけ大変なのか、経理の者の気持ちを知っているみたいだ。
他の部署の者にさえこうなのだから、彼の直属は、
彼の部下であることが嬉しくて堪らないだろう。
僕は焦って、迷って、声を潜めた。
「あの、大丈夫です。不都合なく処理出来ましたし、それに、先月の
専務の額に比べればどうってことなかったですよ」
カウンタに身を乗り出すように、内緒話をするように言ったのは、
彼は悪くないし、彼に謝られていることがひどく居心地悪かったからだ。
村瀬は一度瞬いて、それから笑った。
すぐ近くに座っていた女の子が真っ赤だ。
当然僕も、今度は自制が効かなかった。
こんなに格好良く笑う人を、僕は初めて見た。
「甘やかすなよ」
どういう意味だ、と聞き返す声が出なかった。
「お前みたいな優秀な奴がいると思うと、甘えてしまうだろ」
村瀬に甘えられる想像は全く出来なかったけれど、僕は緊張して何も言えなかった。
「何と読むんだ」
「え?」
村瀬の視線は僕の胸元に下りていた。
僕の社員証だ。
「あ、ヨシユキです」
岡与之幸。それが僕のフルネームだが、まず初対面で正確に呼ばれたことはない。
「与之幸」
「・・・・・ッ」
突然呼ばれて、息を飲んだ。
「助かった、ありがとう」
固まった僕を残したまま、彼は総務部を出て行った。
彼がいなくなった後で、僕が女性社員たちに質問攻めにされたのは言うまでもない。



*****

旭陽くんの試験を応援しようキャンペーン中。
繕と春則で応援したいと思います。
余所見せず勉強するように(笑

あと、春則がボロボロになる話も思案中。
ちょっと長い・・・ような気がするから時間かかりそう。
それから拍手用の二人も思案中。
あーこんなこと考えてる場合じゃないよね。
うん。
勉強せな!
でも試験より前日の女子会のほうが気になって仕方ない・・・
のは仕方ない。

【2011/09/29 12:29 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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