忍者ブログ
  • 2025.05
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 2025.07
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2025/06/17 07:32 】 |
シンデレラの時間 4
ホテルまではすぐだった。
タクシーを降りてロビーに入ると、私の足は止まった。
「どうした?」
やっぱり、行きたくない。
どんなに綺麗になったって、中身は私だ。
「あの、私、やっぱり」
「うん? ・・・ああ、ちょっと待て」
帰る、と言おうとした私を彼は制して、ホテルの入り口を見た。
ロビーの大きなドアから入ってきた人に、私は驚いた。
隣に立つ人もとても格好良いけど、現れた人もすごく人目を惹きつける人だった。
キラキラ輝いていて、テレビで見る芸能人を生で見るとこんな感じかもしれない。
その人はまっすぐに私のところに――私の隣の人のところにやってきた。
「遅い」
「あんたね、これでも最速だったんだけど? メール貰ったときは
まだベッドん中だったんだからな」
「相変わらずよく寝るな」
「寝るさ! 仕事明けだぞこっちは」
「悪かった」
「・・・それで済ますつもりか、あんたは」
呆れたように彼に言った人は、楽しそうに笑った顔を私に向けた。
「君がシンデレラ? 可愛いね、俺がとってもいいの?」
最後の言葉は私に向けてじゃない。
彼は肩を竦めた。格好いい人はどんな仕草も似合うと思う。
「まだ仕事が残っている」
「ふ、ワーカホリック」
笑っているけど、どういうことなのか全く解らない。
シンデレラってなに?
「この前の借りがあるだろう」
「はいはい、引き受けるよ」
あっさりと言い交して、私を変えてしまった彼は最後に私に
笑いかけてロビーから出て行ってしまった。
「あ・・・あの、えっと」
「ん? これから同窓会だろ? もう行く?」
「え・・・な、なんで?」
「なんでって? えっと・・・ごめん、名前聞いていい?」
「あ・・・瀬野、芽衣子です」
「芽衣子? 名前も可愛いね。あ、俺は春則。よろしくシンデレラ」
「シ、シンデレラ? あの、それってどういう意味ですか?」
「え? あいつが言ってたけど。招待状が来てて馬車も用意したのに
舞踏会に行くのに躊躇ってるシンデレラって」
それが私?
てゆうかそんな風に思われてたの?
「可愛い子のエスコート出来るのはラッキーだね」
にっこりと笑うこの春則っていう人は、本当に格好いいけど、
どこか可愛い雰囲気もあって素直に手を取ってしまう。
それから改めて周りを見ると、私たちはとても目立っていた。
地味な私がこんなに見られることなんか初めてで、思わずこの人の腕に縋ってしまう。
「あの・・・私、本当に」
「芽衣子はシンデレラだろ?」
至近距離から晴れやかに微笑まれて、私は魅入ってしまった。
「時間が来たらいつもの芽衣子に戻る。だけどドレスを着てる間は――シンデレラだ」
何も言ってないのに、この人はすべてを解ってるみたいだ。
この笑顔を見てると、私は躊躇ってた何かが全部剥がれた気がした。
「笑うとますます可愛いね」
言われて、私は自分が笑っていることに気付いた。
でも本当に、もう笑うしかないと思う。
今日はいったい何の日だろう。
行きたくない同窓会に戸惑ってたら、雨が降ってきて天気まで行くのを
止めろって言ってるみたいだったのに。
突然現れたスーツの彼に、あっという間に綺麗に変えられて、
驚いてたら王子様みたいな人まで現れて、私をシンデレラにしてくれた。
同窓会の会場はキラキラしてて、舞踏会そのものだ。
隣の人の手を取って、私はそこに入るのにもう躊躇ったりしなかった。
だって私はシンデレラなのだ。
私の中身がつまんない地味な女だって、自分でよく解ってる。
だからこそ、私は躊躇うことはない。
周りの目は私と隣の人に向いている。
その視線に怯むことはない。
「あ・・・そういえば」
「なに?」
「私、あの人の名前も知らない・・・」
春則というこの人は、一度目を瞬かせて、楽しそうに笑った。
「あはは、いいんじゃないの? 魔法使いの役割なんだし
名前なんて気にしないでいいよ」
王子様にそう言われると、本当にそうでいいかな、と思う。
魔法使いにしてしまうには、素敵すぎる人だったけど。
私のシンデレラの時間は、始まったばかりだった。



*****

終わりです終わりです終わりです。
ふー誰だか解かったかな!
結局一度も名前を出さなかった仕事好きな野郎です(笑

さっきUSBのメモリを差して、なのになんか入ってない?
てよく見たらメモリのケース部分から中身がずれてた!!
びっくり。
USBてこうやって壊れるんだ?!
てか、このメモリは壊れてもらったら困ります。
結構前に会計士さんにもらった超巨容量のメモリなのです。
なのでどんだけデータ入れても埋まらない優れもの。
お陰でどんだけ書きかけのものを突っ込んでると思ってるの!
失くしたときも焦ったけど、壊れてもらっちゃーもっと焦る!
どーしよーかなー。
新しいのにするべきか。
それともそっと優しく扱うべきか(笑
だってきっと、この容量の買ったら高いんだよね・・・
困ったのう。

拍手を更新したところ、久しぶりにたくさん押していただけて
嬉しかったです。
そしてコメントも入ってた!
嬉しい! 先月のコメントを今確認!(自分でも押さないから・・・)

ハイナさん、ですよね?
こちらまでいらしてくれてありがとうです!
そして深津と航太郎を読んでいただき誠に! ありがとうございました!
これからも未来亭でよろしくお願いします!

73daさん!!
きゃーこのヨロコビが解かりますか!
更新もほとんどないサイトにまだ来てくださってるぅーと
胸が熱くなりました。
ありがとうございます!
次の拍手はたぶん繕と春則になります。
また来て押してやってくださいねー

Beiさん!
うぉう、この日記のSSの男ですね!
最後までやっぱり名前は出しませんでした(笑
いいんですよ!
こんな男もいるのね、と思ってくださっただけで。
てか、日記を見てくださってるだけで~
嬉しいです!
本日のお仕事はまた走りまわってフル回転なんですが、
午後からも頑張れそうです!

PR
【2011/09/09 12:38 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
シンデレラの時間 3
「こちらはいかがですか?」
恥ずかしいなんて思う前に着てた服を脱がされて、何着か着て
脱いで着て脱いでを繰り返して、ようやく落ち着いた一着を着せられて、
試着室から出された。
そしてスタッフの質問は私にではない。
外で待っていた彼に対してだ。
彼はスタッフの一人と話していたけど、その立ち姿にはっきりと見惚れた。
なんていうか、改めて見て、こんなにも素敵な人を私は見たことがない。
芸能人とか、モデルとか、そんな派手な人とかじゃなくて、
目が離せなくなってしまうような人だと思った。
そんな人が、私を見て笑った。
「似合うな。それでいい。ヘアメイクも頼む」
「はい」
また答えたのは私じゃない。
私なんか一生縁のないブランドだと思ったけど、でも服を売るお店だと思ってた。
なのになんでヘヤメイクまで出来るの?
私の疑問なんて誰も疑問と思ってないみたいだ。
私はされるままの人形みたいに、下してた髪も纏められて
メイクもされて爪の先まで綺麗になってしまった。
大きな鏡の前に出されて、私は何か違うものを見てる気がした。
あれは誰だろう。
薄いピンク色のワンピースはきらきらと輝いていて、膝の上で細くタイトになっている
裾と、両肩を出し首を包むようにされるとすごく細く見える。
肩の下まであった髪はゆったりとしてるのに綺麗に纏められて、
何も付いてなかった耳には金色のイヤリングが小さくも存在をはっきりとしている。
何度か目を瞬かせて、何度も確認したけど、そこには地味な女はいなかった。
頬もキラキラしてて、いったいどうすればあの地味な女がこうなるのか
何の魔法をかけたのか、不思議でならない。
「えっと・・・これ、私?」
鏡の中で私の隣に立ったのは、スーツのあの人だ。
なんというか、私がびっくりしたのは鏡の中で並んで違和感がなかったことだ。
「やっぱりさっきの服より似合う。同窓会に間に合うか?」
「え・・・っ」
なんだかいろいろあって忘れていた。
でも改めて、思い出したけど戸惑うばかりだ。
「あの、でも私、こんな高い服払えません・・・」
「君の服を汚したお詫びだ。似合うのだから気にせず着て行けばいい」
「・・・困ります! あんなの、汚れたって言わないし。ううん、
もともとこんなのをもらうほど綺麗でもなかったし。
そもそも、同窓会にはもう行かないって・・・」
「なぜ?」
真正面から聞かれて、私は正直に言った。
なんだか言い訳みたいだけど、いや、愚痴に近いけど。
私が同窓会に行きたくない理由は、友達に会うのが嫌だったからだ。
高校のとき、私と同じように地味で派手さもなく、
それでも仲の良かった彼女は、大学で変わってしまった。
外見はどんどん派手になって、言葉使いもなんだか変わって、
高校から変わらない私を会うたびに批判していた。
もっと変われと。もっと綺麗な恰好をして、
もっと格好いい男の人を連れて、もっと遊べと言う。
そのうちに、彼女は玉の輿に乗ると言ってお金持ちの彼氏を
捕まえて、私を見下し始めた。
今回の同窓会も言い出し始めたのは彼女で、その葉書には
同伴者を連れてきて構わないと書いてあった。
同伴者なんていない私の足は、さらに遅くなってあそこで止まってしまったのだ。
俯いたまま話し始めた私を彼はじっと聞いてくれた。
だからこんな恰好になっても、私はやっぱり行けないのだ。
「背中が丸まっている」
「・・・え?」
話し終えた私の背を、大きな手が支えた。
「前を見ろ」
促されると、そこにも大きな鏡があった。
背中を伸ばすと、この恰好はとても美しく――私はとても美しく見えた。
「見た目は着飾れば誰だって綺麗になる。だが中身は、
外見がどれほど美しくても醜いものは醜い。俺は綺麗な女にしか声をかけない」
「・・・え?」
「同窓会の場所は?」
聞かれるまま、私は同窓会のあるホテルを答えた。
「で、でも、もう始まってるし・・・」
「開始時間に間に合わないと入れないわけじゃないだろう」
「でも」
「ほかに何が?」
「・・・確かに、綺麗になったかもしれないけど、でも私じゃないから」
「・・・ん?」
どういう意味だ、という顔が私に近づく。
そんな顔は、反則だと思う。
「私、これは、いつもの私じゃないし、だから、こんなの・・・」
一日だけ綺麗になっても、私の中身が変わったわけじゃない。
見かけが変わっただけなら、友達だったあの子と一緒になってしまう。
戸惑いながらも言った私の気持ちを、彼は受け止めてくれた。
「いいな」
「え?」
「時間が許すなら、このまま俺がエスコートしたいね」
「ええ?」
また背中を押されて、私は彼と一緒に店を出た。
そのまま外へと歩いて行く。
「その考えがあるなら、君はどんな恰好をしていたって、綺麗な女だと思う」
私が?
綺麗な女?
この人、本当に私が綺麗だって言っているの?
建物を出ると、雨が止んでいた。
彼はまたタクシーを止めて、私に乗るように促した。
反対側から乗り込んだ彼は、同窓会のあるホテルを告げた。
彼は本当に私を同窓会に出席させるつもりみたいだ。


*****

褒め殺しの術(笑
旭陽くんならこうはならないじゃろう。
見てー綺麗になたよー! と仔犬のように
クルクルするじゃろうて。

すんごくひさしぶりに拍手劇場を更新いたしました。
中身もすんごく久しぶりの人です。

最近なんだか、虫にたくさん咬まれてる・・・
もう観念するしかない。
ベッドにダニがいるみたいだ。
今朝、とりあえず干してきた。
部屋に掃除機もかけなきゃ。
いったいいつからかけてないのか・・・前が思い出せないくらい
前で怖い。
掃除しましょう。掃除。
掃除するのが面倒で物を広げないようにしてるから汚れてないように
見えて、じつはほこりやらなにやらが。
除湿剤も変えなきゃ。
防虫剤も変えなきゃ。
小人かメイドが欲しいと思う今日この頃です。

【2011/09/08 12:35 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
シンデレラの時間 2

私が乗るとドアが閉まって、反対側から傘を畳んだ彼が乗り込んで来た。
「行先は?」
「え?」
傘を横に避けて、私をまっすぐに見つめてくる人は
本当に恰好良くて、ただ聞き返してしまった。
「行先は?」
「え? 行先って・・・あの、どこに?」
押されるままタクシーに乗ってしまったが、行先なんて私が知ってるはずがない。
「どこかへ行く途中で雨宿りしていたんだろう? 行先まで送る」
「で、でも、私は・・・」
「デートかパーティか、どこへ?」
「同窓会に・・・あ、いえ、そうじゃなく」
ワンピースなんて着てるから、そう思われたのかもしれない。
だけど、初対面の人がそんなことまでしてくれるなんて何でなんだろう。
私はこの人の意図が解らず、でも悪意とか私に何かしようとか
いうものは感じられなくて、困ってただ笑った。
「行くの、止めようと思ってたとこでしたので、いいです」
「なぜ?」
なぜ、と聞かれても困る。
「汚れたからか」
「いえ、そうじゃなく・・・」
かかった水なんて汚れに入るものじゃない。
どう言ったらいいのか、私は考えた。
もう同窓会に行こうなんて思ってない。
だって行ったところで、きっともっと面白くなくなって帰ることになるだけだ。
近くの駅で下してもらおうと顔を上げると、ちょうど車が止まった。
「え? あれ?」
どこだろう、と外を確認していると、隣に座っていたはずの人が
外からドアを開けて傘を差して待っていてくれた。
「どうぞ」
「えっえ?」
狼狽えても、また彼の背中が濡れている。
傘の下に手を差し伸べられても、そんなことをされるのも初めてで、
取っていいのかどうかも解らない。
途中まで出した手を伸ばせないでいると、大きな手が私の手を
包んで強い力で引っ張った。
「あの・・・?」
また傘の下で背を押され、私はそのまま歩くしかない。
どこへ行くのかと隣を見上げると、視線に気づいたのか少し俯いて笑った。
笑顔がすごく素敵で、私はきっと顔が真っ赤だ。
彼が傘を畳んだのは大きなデパートの中に入ってからで、
私は改めて見て戸惑った。
前を通ったりちらりと覗いたことはあるけど、私には敷居の高い
デパートだったからだ。
「服を汚した責任は取る」
「あ、あの、私、汚れてませんから、気にしないでください」
「俺が気にする。それに――あまりその服は似合ってない」
不遜なほどはっきり言われて、私は返す言葉がなかった。
似合ってない――そうかもしれない。
私の持っている服の中で一番綺麗で高い服だったけど、
似合ってないのも事実だと思う。
俯いたまま、隣に立つ人に押されるまま歩いたけど、
入って行った店に足が竦んだ。
不安になって隣を見上げると、彼は平然と店のスタッフを呼んだ。
「彼女に合う服をいくつか選んでくれ――靴も、全部」
「はい」
にこやかに受け答えたのはスタッフの女の人だ。
私はただ驚いて彼とスタッフを見比べた。
はいって、そんな簡単に答えているけど、私のことを話しているんだよね?
私抜きで。
いったいこの状況はどういうことだろう。
さっきまで雨の中足を止めて家に帰ろうとしてたのに、どうして私には
不相応な店で似合うとも思えない服を着せられようとしてるのだろう。
狼狽える私を、店のスタッフはにこやかに連れて行こうとする。
なんていうか、すっごく怖いんですけど。
本当について行っていいのかな。
振り返ると、私をここに連れてきた彼が目を細めた。
私の不安なんて奥まで見抜いて、すべて受け入れてくれるような笑顔だった。
そんな顔をされると、何も言えなくなるんですけど。
試着室に入れられた私が見たのは、綺麗に磨かれた鏡に映った真っ赤な私だった。


***

まだ続きます。
てゆうかですね。
今書いてるこの画面がですね。
なんか変なものが出てくるんですよ。
打ち込むそばから予測変換というかなんとうか。
正直。
邪魔であります。
あ。
なんか頑張っていろいろつついてたら消えました。
しかしなんじゃろうなー。
この子、反応が遅いのであります。
今一文を打ち込んで最後の丸まで一気に入力したんですが
画面上に出てくるのが遅い!
間違ってるのかどうのなのか解かんないよ!
容量はいっぱいあいてるはずなのに、なんでこんなに
遅いのかなぁー
機械って本当解からない。

【2011/09/07 12:26 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
シンデレラの時間 1
ついてない。
ホントについてない。
どんよりとした空だったけど、とうとう雨が降り出した。
出かけるときにどうして傘を持って来なかったのか。
行きたくないという本心がいろいろ物を忘れさせてくれた。
唯一持っているイヤリングも忘れて、結局髪はいつものように下した。
雨量がゆっくりと増え始め、周囲は傘を差すか小走りになって急ぐ人々ばかりだ。
私はどちらも選ぶことなく、気持ちと一緒に足を止める。
どこかのビルの軒下にとりあえず避難して、本格的に雨宿りすることにした。
あーあ。
何で出て来たのかな。
やっぱり欠席すれば良かった。
大学を卒業して1年、ようやく就職した会社に慣れたころだった。
会社といっても大企業でも有名なところでもない。
仕事だって誰でも出来る事務職だ。
地味な人間が地味な仕事をして地味な人生を生きている。
そんな私が何で同窓会なんか行くことにしたんだろ。
しかも高校の同窓会だ。
成績は中の中で、外見も地味で、性格も地味で、
誰かの目に留まることなんて一度もなかったのに。
同窓会の葉書が来て、職場の先輩に世間話のつもりで話したら、
出席してみたら、と言われた。
学生の頃とは違うから、きっと昔解らなかったことに気付く。
そしたら楽しいよ、と教えてくれた。
一体どんなことに気付くのか解らなかったけど、なんだかその気になってしまった。
その時は。
実際に現実になると、この雨みたいにどんよりとしてユーウツだ。
深くため息を吐いたとき、スカートの裾と靴に水滴がかかった。
「あ」
本当にかかった、という程度で、私は驚いた声を上げただけだった。
「すまない、かかったか?」
「あ、いえ・・・大丈夫、です」
俯いた視界に男の人の足と畳んだ傘が見えた。
傘が閉じたときに水滴が飛んだんだ。
謝られるほどじゃない。
だって私の持っているワンピースなんて
そんなに高いものじゃないし、かかったのは水だ。
拭くより放っておけば乾く。
それに、もう私はこのまま同窓会に行こうという気は
なくなっていたから汚れても関係がない。
「大丈夫じゃないだろう・・・ちょっと待っていてくれるか」
「・・・え?」
はっきりとした声は凛としていて、暗い気持だった私に清々しく響いた。
でもどういう意味かと顔を上げたときは、すでに背を向けて
ビルの中に入っていくところで、私は躊躇った。
本当に気にしてないから帰ってしまおうかと思ったけど、
一歩外へ出れば雨に濡れる。
傘を持っていないのだから帰ろうとすれば濡れるのは必然だけど、
私は足を動かすことなく、ただぼんやりと雨を眺めてしまった。
「待たせたな」
背中から声をかけられて、振り向くとスーツを着た男の人が立っていた。
私は何を言うでもなく、驚いた。
だってすごいかっこいい人だったからだ。
私に声をかけたということは、さっきの傘の人なんだろうけど、こんなの想像外だ。
「行こう」
「え・・・っあ、あの」
どこに、と私が聞く前に、私の背を押すようにしてビルの陰から出てしまった。
雨が、と思ったけど、私は濡れなかった。
いつの間にか差された傘が私の上にかかっていたからだ。
さらに歩道を超えて、車道に出て彼はタクシーを止めるように片手を上げた。
その手を見上げるようにすると、彼の肩が濡れていた。
なのに私は全然濡れていない。
水滴がかかったスカートすら、すでに乾き始めてるくらいだ。
「乗って」
「あの、ま、待ってください、なんで・・・」
「濡れるから、乗って」
言われて、私は止められたタクシーのドアの前で、彼の背中を見た。
傘は完全に私しか隠してない。
スーツの背中が濡れている。
私はそれをどうにかしたくて、とりあえずタクシーに乗った。


****

さて誰だ?(笑
結構前に思いついてて、勢いで書いてみた。
でも1話じゃ納まんなかった・・・
また明日にでも続きます。
タイトルも最初に考えてたのと違うしな。
拍手に入れようと思ったのだけど、なんか
放置して置けるような内容でもなかったので、SSに。
あそこはBLとして延々放置して置けるのが
許される内容でないと・・・(いやまぁ放置はどうかとは
思ってますよ。思ってますけど)

今日はびっくりするくらい快晴です。
気温もそんなに高くないです。
秋なのかなぁ。
台風過ぎたし。

【2011/09/06 13:24 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
ピアノ
薄暗いフロアは、足場が見える程度の間接照明が多く、
落ち着いた雰囲気を出したバーだった。
入り口から地下に入ったところにある店内には前から
グランドピアノが黒く光っていたのは知っていた。
黒く重い扉を押し開けると、ゆったりとした曲が
耳に届いた。
BGMではない。
誰かがピアノを弾いているのだ。
フロアは20人ほどが詰めてもゆったりとできるほど広く、
カウンターの奥にバーがある。
その隣の小さなステージとも言えない場所に、ピアノが
鎮座し、普段は置物と化しているそこに人が座っていた。
ゆっくりとしたテンポではあるが、曲を春則は知っていた。
――ニューシネマパラダイス?
驚いたのは、そのシャツの背中が誰かわかったからだ。
スーツのジャケットはピアノの上に投げ出してある。
ネクタイが左の肩から背中に流れていた。
袖を肘まで捲くり、節張った手が鍵盤の上をゆっくりとだが
的確に動いていた。
フロア全員の視線がピアノに向かっている。
バーテンもスタッフも時間を止めたようにその姿を見ていた。
春則は曲が終えるのを待ってドアの前から動いた。
盛大ではない。
しかし感情の篭った拍手がフロアから広がった。
ピアノの前に座っていた男はジャケットの傍に置かれた
グラスを手に掲げて見せ、薄く笑ってそれに答えただけだ。
「芸達者だな、あんた」
春則が声をかけたのはグラスとジャケットを手にカウンタに
戻ろうとした背中にだった。
フロアにはすでにいつもの雰囲気を出すためだけのBGMが
流れている。
ジャケットを手にした繕はゆっくり振り返り、
「昔知り合いにあれだけ仕込まれてね」
「何のためにかは聞かないでおくけど、何で弾いてたんだ?」
春則は繕の隣に並び、なじみのバーテンに自分の注文を頼んだ。
繕はスツールの背にジャケットをかけて腰を乗せ、肘をついたまま
春則を見て笑った。
「時間つぶしだ」
春則は目を細めた。
その時間つぶしに、今日はフロア中の視線を独り占めだった。
ため息を吐いて、春則は繕から視線を外した。
「よくやるよ」
「どうも?」
「褒めてねぇ」
並んだ背中に、いつもの時間が戻った。


*******


IN 熊本。です。
旭陽くんにいわれて勢いで書いてます。
ホテルのロビーにピアノがあって、その周りが
カウンタになってたんですよ。
それで思い付きを言ったら、書け、と旭陽くんが。
そして今、もう書き終わったことに傍で驚かれて
おります。
これだけ打つのに、いつもどれだけ時間をかけてるの
この子は・・・

本日は熊本城に行ってきました。
そこを出たあたりで雨が降り出し、あんまり観光は
できなかったけど、いつものようにデパートでウィンドウ
ショッピングなど(笑
絶対に着ない! と言い張る羅夢.ちゃんに試着をさせる
ところまではよかったけど、買わせられなかった・・・
すんごくかわいかったのに。
あのピンクのドレス。
着たところも見せてもらえなかった。
次回はショウができるくらいがんばりたいです(笑
旭陽くんには明日どうにか何かを買わせたいです。
私は靴を買います。
なぜなら本日、サンダルが壊れたから。
秋らしいブーティがほしいです。
ショートブーツでもいいです。
熊本まで来て買い物の旅・・・まぁいいんですよ。
明日は阿蘇に行きます。
楽しくドライブしてしゃべり倒しておいしいもの食べて
いろんなもの買って、充実した旅にします。

そんな私の写真は、旭陽くんがブログに掲載中(笑
そちらもよろしく。


【2011/08/26 23:30 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
<<前ページ | ホーム | 次ページ>>