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【2024/05/18 22:52 】 |
職業病
「あー、この子名前なんだっけ」
仕事帰りに寄った辰彦が、つけっぱなしのTVに映った
アイドルを見て呟いた。
「えーとほら、なんかドラマもしてただろ?」
「そんなこと訊かれても、辰彦も覚えてないのに
僕が知ってるはずないじゃないか」
なんとなく、顔は解かる。
最近よくTVに出る、たくさん女の子のいるグループのひとりだ。
好きな俳優とかならともかく、ひとりで売り出されているとかなら
ともかく、こんなにたくさんの女の子の名前を覚えろって
いうほうがおかしい。
「そうだけどな」
「この子がなにかあるの?」
「いや、なにかってわけでも言いたいことがあるわけでもないけど、
思い出せないとなんかこの辺りがすっきりしない」
このあたり、と喉のあたりを指しながら言われても、僕になにが
出来るはずもない。
「ただいま」
ちょうどそのとき、仕事から帰ってきた航さんがリビングに入ってくる。
「おかえりなさい」
「先輩! この子の名前なんでしたっけ?」
僕の声にかぶさるように、辰彦がTVを指す。
そんなこと、航さんに訊いたって仕方がないのに。
そう思ったのに、航さんはまだ映っていた画面のアイドルを見るなり、
「××××(好きな名前をいれてください/笑)」
あっさりと答えた。
ぽかんとしたのは僕だけではなく、答えなんて期待してなかった
辰彦もだ。
航さんはそれがどうしたと言わんばかりにネクタイの結び目に
指をさし込み寛ごうとしている。
「先輩? これは?」
驚いたまま、辰彦は自分の鞄から雑誌――週刊誌だ――を
引っぱり出し、その中の見開きにいたアイドルグループを見せた。
件の女の子のいるグループ勢ぞろい――だと思う――の写真だ。
航さんは少し見てから、辰彦の指さす順番通りに淀むことなく
名前を言い当てた。
言わせておいて、辰彦は不思議そうな顔で航さんを見る。
「航太郎先輩・・・いい歳してファンだったとは思いませんでしたよ」
その声はからかう気満々だった。
でも航さんは呆れた顔で溜息を吐いて、
「一度見た顔は忘れないんだよ。職業病だな」
「いったいどれだけメガメモリなんすか?」
「そのうち許容量がいっぱいにならないかと最近不安になる。
消去する方法を教えてくれ」
軽口を言い合うのを見ながら、僕もほっとした。
でも――これだけは聞けなかった。

航さん、いつあのグループの名前覚えたんだろう?



******

勢いで書いちゃいました。
勢いってコワイネ!
ちなみに私は、アイドルの名前はさっぱりです!
覚えようとも思いませんが、TV見ても全然わかりません!
みんななんでそんなに解かるのかが不思議・・・

そもそも、ひとの顔覚えるのが苦手で苦手で・・・
1回や2回会ったくらいじゃ、覚えられないんですよねー
ほんとに。困ったな。
先日、車が変わったときに(代車中)知らないおじさんに、
「車かえたの?」とコンビニの駐車場で声を掛けられました。
「ぶつけられて修理中なんですよー」と笑い返したものの。

おっさん、誰だ?

全然知らないひとだと思う・・・んだけども。
だけども?
最近仕事でたくさんの人と会うので、どうやってひとの顔を
覚えられるのか、航太郎、教えてください!

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【2012/01/28 12:38 】 | ウツムキスマイル | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
おかえし
「なんでこんなにもらわなきゃならないんだ?」
不機嫌に近い航太郎の声に、深津はそっと肩を
小さくした。
リビングのテーブルに広がるのは新鮮なフルーツだ。
もちろん自分で買ったわけではなく、贈られてきたものだ。
航太郎はそれを見たとたん、ほとんど自棄になって、
全部ジュースにして失くしてしまおうとしていた。
深津はそれを手伝いながら、うーんと少し考える。
先日、美容と健康に、と贈られたフルーツは買いすぎたから
という言わば余りものと判断したのだが、今回はなんだか
違うように思えた。
新鮮な青果をいただけるのはうれしいが、ありがとう、と
御礼ひとつで済ませるには少し金額が高すぎるように思う。
「もしかしたら、青汁のせいかなぁ」
「なに?」
呟いた深津に、航太郎は機嫌も悪く問いただした。
深津は少し怯みながらも、もしかしたら、と思うことを話した。
「先日、伊集院さんがカットに来られた時、いつも飲み物を出す
んですけど、だいたい海ちゃんが用意してくれるんです。
その日も普通にコーヒーカップに入れてたし、普通のコーヒー
だろうと思ってたんですけど・・・」
深津の顧客である医師でありモデルである男が帰った後で、
海がつまらなさそうに言ったのだ。
「普通でしたねー」
「なにが?」
「今日出したの、深津センセーの青汁だったんですよ」
「・・・・・ええ?!」
伊集院の態度はいつもと同じで、変わったところなどなかった。
海の言うとおり普通だった。
それでも、きっと初めて飲んだはずだ。
なにしろ、彼の美しさは管理されているものだから、そんなものを
わざわざ飲む必要がないからだ。
でも帰ったあとで、青汁を飲むよりやっぱりフルーツを飲みなさい、
という意味で贈ってくれたのかもしれない。
深津が説明すると、航太郎は不機嫌さを全く隠さない顔になっていた。
「なんだその一方的な押し売りは!」
そういうと、航太郎は買い置きの青汁の箱をつかんで財布と
ジャケットを手に家を出ようとした。
「こ、航さん? どこに行くんですか?」
「フルーツなんかより、これを飲めばいいんだ、先生も!」
フルーツのお返しに青汁を送るつもりらしく、航太郎は素早く
コンビニへと出て行った。
それを何も言えず見送ってしまった深津は、家の中が静かに
なったあとで、深く深く息を吐いた。

青汁にしろフルーツにしろ、もういらない・・・

正直飽きていた深津なのだが、それは誰にも言えない
言葉で飲み込むしかなかった。


*****

勢いです!
再び勢いで書いてみました!
未来さん、つないでくださってありがとうございます!
あまりに面白かったのでまた書いてしまいましたが(笑

この話は、未来亭の未来さんの新作を買わないと
わからないと思います。
でもまぁ、どこを切っても甘い話がウリの深津と航太郎です。

最近バタバタしてて落ち着かない――というか、
落ち着いて小説を書く気にならないしネットにも
あんまり入れないので、落ち気味です。
でもちびちび更新していきたいです。

しかし寒くなりました。
今日は寒くて着込んだのにまだ寒かった・・・
もう11月も後半ですもんね。
寒くて当たりまえですよね。
でもいつ電気毛布をだそうか思案中です。
こう、出すぞ! って日が決められないんですよねー
いつも。
しまう日は早いんですけど。
早くGDが来ないかなぁ。新しいやつ。
それを手にして、今年の残りも頑張りたいと思います。
てか、それが来ないと頑張れない・・・

【2011/11/21 18:36 】 | ウツムキスマイル | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
とっても、おいしい
「海ちゃん、青汁飲む?」
「・・・・はい?」
驚いた、というより、すっごく訝しんですっごく苦そうな顔をした海の顔に、
深津はそうだよね、と心の中で納得していた。
自分で言っててもなんだかそんな顔になりそうだ。
「青汁」といえば、「健康に良い」ってイメージで、でもそれと同じくらいか
――それを追い越すくらいに、「まずい」ってイメージが付きまとうものだ。
深津は粉の入ったスティックを振りながら、海に現物を見せた。
「美容と健康にいいみたいなんだよ。――ううん、みたいっていうか、
いいんだよね、本当に」
身体に良いものを飲んでいるのだから、いいはずだ。
だけど、美味しくない。
その一言で全てが霧散するというか、台無しになっているというか。
深津は複雑そうに、こちらを覗っている海に苦笑する。
「これ、まずくないんだ。美味しい青汁なんだよ。――本当に」
言った言葉に嘘はないが、なんとなく最後に一言
付け加えてしまうのはなぜだろう。
海も少し思い当ったのか、首を傾げて深津の手を見る。
「あー最近、なんか聞きますね。そういうのが出たって。
飲みやすくなってるんでしょう?」
「うん。飲みやすい。これなら毎日飲めるんじゃないかな」
「うーーーーん。でも・・・青汁なんですよね?」
美味しくても青汁。
それが海が躊躇するところらしい。
「昔、おばあちゃんに飲まされたことがあるんですよー青汁。
もうそれが、まずいのまずくないのってレベルじゃないくらいまずくて!
もう人として口にしていいものと悪いものがあるでしょう?! てくらいで」
どうやら海はその味が忘れられないらしい。
深津は納得しつつも、手早くコップに青汁を作ってみた。
「僕もあんまり好きじゃなかったんだよ。美味しいからって言われても
信じられないというか信じたくないっていうか・・・でも、
一度飲めちゃうとこれがあっさりと」
人間って不思議だよね、と笑うと海は少し深津の手にある
緑色の液体に興味を見せた。
「深津センセってば、こういう健康ドリンクとか、好きでしたっけ?」
「ううん。特に興味はなかったんだけど――航さんが」
「ええっこーたろさんってばあんな顔で健康オタク?!」
「違います!! ――ていうか、顔は関係ないよね?」
勢いで否定してから、深津はため息を吐く。
海は時々、反射で航太郎を貶めることを言う。
これはほかの誰でもない、深津の師である奥の影響だ。
仕事は尊敬するけれど、これだけは良くない先生だ、と
深津は不満が顔に出てしまう。
「じゃあなんでこーたろさんは青汁飲んでるんですか?」
「ええと・・・説明は難しいんだけど」
「簡単に、お願いします」
きっぱりと言われて、深津は少し考え込んだ。
きっと話は簡単なのだ。
しかしそこに感情が混じるから、複雑になるのだ。
深津は思い出しながら、起こった事実だけを短い言葉で
繋げてみることにした。
「えっと、カットフルーツを貰ったんだ。すごく新鮮で、すごく美味しいもの。
美容と健康にいいから、ジュースにして飲んでくださいって。
それでジュースにしてみると、本当においしくて、航さんにも飲んでもらったら、
日本人なら健康に良い飲み物を飲むなら青汁だって言って・・・」
美味しい青汁を探して飲み始めることになった。
海は呆れた顔をしてそれを聞いていたが、
「・・・最後が意味わかんない」
「・・・そうだよねぇ」
深津もそうだろうと思ったので、一緒に頷いた。
話は複雑で、でも、単純なのだ。
カットフルーツは深津の顧客であるモデルであり医師でもある人に、
買いすぎたので、という理由でおすそ分けしてもらったのだが、
ジュースにしたそれを前に航太郎にいきさつを話すと、さっきまで笑顔で
美味しいと言っていたのに途端に眉根を寄せた。
「深津の美容とか、そんなの、どうして先生が気にするんだ」
そんなの知りませんけど、というか、そういう意味じゃないと思いますけど。
深津がどう言おうとも、航太郎の顔が戻ることはなかった。
そして、
「先生は外人だからな。こんなフルーツしか思い浮かばないのかもしれないが、
日本人なら美容と健康のために飲むものはこれって決まってるんだ!」
と、勢いに任せたおかしい論理を言い張り、青汁の購入を決めてしまっていた。
そういうわけで、深津はここのところこの青汁を飲んでいるのだが、
これが飲み始めると本当に続くもので、仕事の休憩中にも持ってきてしまったのだ。
複雑で単純な理由を知った海は、呆れた顔からびっくりした顔になる。
「は?! それで? それで深津センセに青汁飲ませてるんですか?! 
深津センセーの美容を保たせるために?!」
「え。いや、美容と保たせるとか、そういうわけじゃ・・・」
「わーっもう、信じらんない! こーたろさんてばどこまで自分本位なんですか! 
深津センセもセンセーですよっそれで素直に飲んじゃったりして! 
どこまでこーたろさんのこと信じてるんですか!」
「えっ信じてって・・・だって、本当のことだと」
「本当じゃないですよっそれって自分のために綺麗でいろって
男の勝手な言い分ですよっ」
深津の言葉を遮るように、海は手を握りしめて力説した。
しかし、青汁が美容と健康にいい、というのは事実だと思う。
深津がそう言っても、海はなぜだかプリプリと怒っていて、
それはその後一日ずっと直ることはなかった。
唇をとがらせて怒る海に、深津はとりあえず、
もう青汁は勧めないでおこう、とそっと決めた。
 



*****

未来さん、新作ありがとうございます!!

と、まず御礼から。
未来亭の未来さんが、新作の配信(有料)を始められました。
チャリティですので、その売り上げは寄付金にまわされるそうです。
相変わらず・・・すごいなぁ、未来さん。
少しでもその力になれれば、と私も一口――とかってすみません。
そんな高尚な気持ちではなかったです。
純粋に、未来さんの新作が読みたかっただけです!!
だって面白いもん!

というわけで、勢いで書いてみました。私も。
新作の短編を読んだ人なら分かってもらえるはず。
てか、浅見さんちのお手伝いさんって!
思い切り吹き出しましたよ。それわかる人ってどのくらいいるのかしら。
お手伝いのスミちゃんの気持を光彦さんは気づいているのかしら。
てか私、刑事局長のお兄ちゃんが好きで好きで溜まりません!

最近、現実では仕事以外でいやになることがあったばかりで。
久しぶりに楽しい気持ちになったのでした。
未来さん、いつもうれしい気持ちをありがとうございます。

そして、自分のHPを見て。
このところ更新という更新もしてないのに、日々いらしてくださる
皆様に感謝!!
もうちょっと、もうちょっとこのささくれ立った気持が落ち着いたら。
何かを更新したいです。
とりあえず、簡単なところで拍手劇場とかですけど。

【2011/11/07 22:17 】 | ウツムキスマイル | 有り難いご意見(1) | トラックバック()
びこう

「ね・・・ねえ、やっぱり、やめようよ」
前ゆく2人に小さく声をかけると、くりんと長い髪をなびかせて
翔子が振り返り強く言った。
「何言ってんのここまで来て! 深津も知りたいでしょ?!」
目が爛々と輝いている。
深津のためというより自分の好奇心を満たすためだと
はっきり解ったが深津には言い返すことはできなかった。
「諦めろ深津。気になることは気になるんだろ」
翔子の隣に並んだ辰彦にも言われ、深津は頷くような頷かないような
曖昧な角度で顔を傾ける。

航太郎が週に何度か、学校が終わると急ぐようにどこかへ
向かうのは知っていた。
深津の視線は気付くと航太郎を追っているのだ。
それに気付いた辰彦も航太郎の行動に興味を覚えた。
さらに航太郎を直接知らない翔子が目を輝かせ、3人で帰っている
途中でどこかへ向かう航太郎を見かけたものだから後をつけ始めた
――わけなのだが、正直深津には不安でいっぱいで何度も
止めようと声をかけた。
航太郎のことは気になる。
後を付けた、なんて本人に知られたら怒られるかもしれないし、
最悪軽蔑されて嫌われるかもしれない。
それだけは嫌だった。
しかし気になる。
どこへ行くのか、誰と会うのか。
もしかして彼女と待ち合わせているのか――そうだとしたら
さらにショックを受ける。
でも現実を知って傷を受けるなら早い方が楽になる。
鬱々とそんなことを考えながらなのではっきりと止めることも
出来ず、ただ深津は楽しそうに航太郎を追う2人に付いて
いくしかなかったのだ。

人ごみにこそこそと隠れながら、駅前に近い映画館へと
航太郎が入っていく。
「映画?」
「待ち合わせかな」
「一人で見る趣味はないだろ」
「デートかな!」
「野郎とじゃないだろーなー」
辰彦と翔子が楽しそうに会話する中、深津はそれに
酷く打ちのめされたように沈んでいった。
顔が泣きそうに歪んでいるのも解かる。
解かっていたけど。
航太郎がもてて、当然彼女くらいいるだろうとも
解かっていたけど。
自分がどう出来るとも思ってもいないけど。
それでも、深津は落ち込んだのだ。
そんな深津に翔子は楽しそうに振り返り、
「もーそんな顔しないでよ! せっかくの可愛い顔が
台無しよ!」
「そうそう、ほんとに一人で映画、なんて寂しい趣味
持ってるだけかもしれないだろ」
慰めてくれているのかもしれないが、友人たちは
とっても楽しそうだ。
「べ、別に、一人で映画見たって、寂しい趣味とかじゃ
ないと思うし・・・」
誰かが航太郎のことについて、貶めるようなことを
言うとつい深津は反論したくなってくる。
どんな趣味だって航太郎ならいいと思う。
どんな面を見たって、深津の気持ちは変わらないのだから。
言い返した深津に、2人はさらに楽しそうになった。
「まー寂しくはないけどー」
「でもあれかもよ? ほら丁度アニメも上映してるよ?」
「あーこのアニメかーそれをひとりでこっそり見に来てるわけだ?」
「つまり航太郎先輩は、オタクな人ってこと?」
「そうなるな」
「えー! へーえ! そう! そんな感じしないのにねー」
「人は見かけによらないって言うだろ」
「そうだねーオタクな人かー部屋にポスターとか貼ってあるのかしら?」
「かもな。しかも超巨大なやつ」
「うわあーそれを毎日ひとりで見てニヤニヤしてるんだ!」
「あー想像したらこえーな。しかしあの先輩にそんな趣味がねー」
「これは深津も考えものよねっどうする?!」
「ど、ど、どうって、どうって、なに、が?!」
勢いよく2人は呼吸もテンポも合って話すので、深津は反論しようにも
口を挟む隙がない。
さらにそんな質問をされても、どう答えたらいいのかも解からない。
「だからぁ、航太郎先輩がオタクだった場合、よ」
「そうだぞ。オタクの先輩だぞ?」
2人が楽しそうに、しかし真剣に深津に詰め寄った瞬間、低い声が響いた。

「誰がオタクだって?」

驚いて、勢いよく振り返るとそこに件の先輩――航太郎が青筋を
立てるような無気味な笑みで立っていた。
「あっれ、先輩、グーゼンっすねー!」
辰彦が今までの会話などなかったように声を返すが、航太郎は
じろりと睨み、
「人のあと付けるようなヤツに趣味がどうとか言われたくないぞ」
「あれ、気付いてました?」
ははは、と笑ってごまかす辰彦に、航太郎は当然だ、と息を吐く。
「あんなへたくそな尾行に気づかないはずないだろう。時間が
なかったんで放っておいただけだ」
しかも映画館につけば声を抑えるでもなく大声で話しているのだ。
「ナニに急いでたんすか?」
「バイトだよ。ここでモギリのバイトしてんだよ」
「あーなるほど」
「こっちの子はお前の彼女か? 前に言ってた」
「そうですけど」
「こんにちは初めまして、東翔子です」
翔子は可愛らしい顔を最大限に生かしにっこりとほほ笑むが、
先ほどの会話を聞いてしまった航太郎はその下にあるものを
見抜いて苦笑するしかない。
「どうも、木崎です・・・つか辰彦、お前もどうなんだよ。S講館の
彼女ってどんな手を使ったんだ?」
「ちょっと先輩、失礼ですよ。まぁS講館の彼女ってか、彼女が
S講館に入ったっつーか」
S講館は地元どころか県下でも上位に入る超絶進学校だった。
その制服を着ている翔子は普通の学ランを着ている辰彦や
深津より目立つ。
「話には聞いてましたけど、すんごく爽やかな先輩だね」
「俺も話には聞いてたけど、想像してたより面白い子だね」
翔子と航太郎が裏のありそうな笑顔で笑い合う。
「しかしひとのあと付けて勝手な想像してお前らも暇だな」
「いや、暇ってわけじゃないですけど」
「楽しそうだったからー。ね、深津?」
「う、えっ?!」
それまで会話に入ることなく慌ただしく流れる周囲に付いてもいけず
呆然としていた深津は突然振られ、焦った顔で口を開閉させた。
「長谷川、普通に漫画くらい読むけど、べつにオタクじゃないぞ、俺」
どこか困ったような、それでいて真剣な顔で言われて、深津は
何を言うこともできず、ただ何度も頷いた。
そんなこと、解っている。
いや、どうだっていい。
航太郎が航太郎であるなら、深津は何だって受け入れられる。
しかしそんなことを思った自分に恥ずかしくなり、深津はますます
顔を赤くして、俯くしかないのだった。
「長谷川?」
どうしたんだ、と首を傾げる航太郎の側で、友人2人が面白そうに
笑っていた。


*****

再び勢いで書きました。
高校生の深津も大人の深津もかわんねーなー(笑
ただ、初めて書きました、翔子ちゃん。
辰彦の彼女です。
いつか中学生編を書いてちゃんと登場させたいです。

お盆休み目前にして、なんだかとっても体力がないです。
すでにヘロヘロっつーか気持ち悪いっつーか。
あー治まりかけてた夏バテ復活っつーか。
昼にくったカラアゲがトドメだったっつーか。
まめにおいしい野菜料理のお店に連れてってもらって
回復したいです。
楽しみだ。


【2011/08/11 08:57 】 | ウツムキスマイル | 有り難いご意見(2) | トラックバック()
とけいうさぎ


「今日お店に来ないと損しますよ」

というメールを深津の助手からもらったのはその日の午前中だった。
何があるんだ、と訝しみつつも仕事を終えて深津の店に行くと、
「いらっしゃいませ・・・え?!」
にこやかに迎えてくれたのは深津だった。
航太郎に気づいて驚いて、慌てた様子になったが深津だった。
たとえ黒いスラックスにおそろいのベスト、リボンタイであっても――
頭に真っ白なウサギ耳がついていようとも。
深津だった。
朝、出かけたときはこんな格好じゃなかったはずだ。
航太郎は確かめるように深津を眺めると、深津はうろたえて
逃げるようにスタッフルームに入ってしまった。
「あー、お仕事終わられたんですかー」
ご苦労さまですー、と声をかけてきたのは助手の海だ。
こちらは短いスカートにひざ上までボーダーのソックスを穿いていた。
さらに頭にはネコ耳だ。
「・・・これは・・・なんなんだ?」
航太郎としては、とりあえず意味を訊いてみるしかない。
「今日はイベントデーになっててー、アリスの格好をしようってことになってー」
アリス?
不思議の国のアリスだ、と気付いたのは一瞬後だった。
なるほど、海はチシャ猫で、深津は時計ウサギというわけだ。
しかし、肝心のアリスがいない。
「アリスは、お客さんになってもらうんですよー」
あと、ハートの女王と選べます、と航太郎の心を読んだように海が答えた。
「それで――写真なんか、撮ってないだろうな?」
航太郎としては、まず確かめたいところだった。
一瞬見ただけでも、深津の姿は正直誰にも見せたくないと思ったからだ。
海は航太郎の視線から外れるように、
「えーっと、お客さんは撮影不可にしてますけどー」
「・・・客じゃない誰が撮ったって?!」
「朝一で見にこられた奥先生が」
あの人は、と航太郎は隠すことなく舌打ちをする。
「そもそも、イベントデーってなんだ?」
そんなもの、店にはなかったと航太郎は首を傾げる。
「REGでやってるイベントなんですけど、一緒にすることに
なったみたいで」
「REG」とは、深津の師である奥の店だ。
あの店そんなことやっていたか? と航太郎は首を傾げ、
さらにどうして支店でもない店にやらせるんだ、と面白くな気持ちになる。
おそらく、楽しそうだから、という奥独断の理由だろう、というのも察して
さらに憮然とする。
そのまま足をスタッフルームに向けた。
入口はひとつだ。深津はそこから出てくる気配はない。
航太郎は海にしばらく外すことを言って、その扉に入る。
「深津」
「・・・な、なんで来るんですか、今日!」
「なんでって・・・見に来いって言われたから。海ちゃんに」
「うー・・・っ」
深津は左右に棚のある狭い場所で、航太郎に背を向けて海への
悪態を吐いている。
背を向けても、長い耳はよく見える。
「深津、ちゃんと見せて」
「や、です」
「なんで」
「なんでって・・・こんな格好、おかしいし」
「全然おかしくない。むしろ、おかしくなくて困る」
「・・・はい?」
「そんな恰好、他の誰かに見せたくないくらい可愛い」
「・・・・・・」
素直な気持ちを言った航太郎に、深津は無言のままゆっくり振り返り、
困った顔を向けた。
「か、わいいとか、そうゆうの、おかしいですから」
僕もう、子供じゃないのに。
深津がそう言っても、航太郎には可愛いものは可愛い。
「そうか? なぁ深津、よく見せて」
「こ、航さん・・・っ」
奥に居る深津に近づいて、その表情を見ようと顔を寄せる。
それでも恥ずかしそうに俯く深津の顎を取って、人間の耳から
ウサギの耳を確かめるように髪を撫でた。
「こんなに可愛いウサギ、ほんと捕まえたくなるな」
「はい?」
「家に帰っても、また付けて見せて」
「えっ?!」
無理です、と勢いよく首を振る深津に、航太郎は微笑んで頼んだ。
「こんな場所じゃ、満足出来ない。なぁ深津・・・しっぽはないんだ?」
ないです、駄目です、満足ってなんですか。
そう反論したいのに口だけを動かす深津に、航太郎は無理やり約束
させるように顔を寄せた。
「な・・・楽しみにしてるから」
「航さん・・・っ」
無理、と言いそうな唇を塞いで、航太郎は夜を楽しみに待つことにした。

顔をほてらせた深津がスタッフルームを出て、仕事を終えるまで
航太郎はちゃんと見張っていようと待っていた。
海が相変わらずですねぇ、とからかうことも、航太郎は気にならなかった。



*****

なんか勢いで・・・書いちまいました!
未来さんとこに、お礼SSを送った勢いで。
甘い二人が書きたくなって・・・!!

いやしかし、試験まで一ヶ月を切りました。
勉強します。
ほんとに、しばらく勉強漬けになります。
やらなきゃ!
やるぜ!
でも勉強しなきゃいけない時にかぎって本読んだり
小説書いたりしたくなるのはどうしてじゃろうなー
子供のころからじゃけん。
これって人間の習性?

 

【2011/05/25 10:26 】 | ウツムキスマイル | 有り難いご意見(4) | トラックバック()
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