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「トリック オア トリート!!」
10月31日。 帰宅した犬養を迎えたのは、オレンジ色のマントをして 両手を広げ、全開の笑顔のキナだった。 足元にはキナの予想通り大型犬ほどに成長した クリーム色の犬が先のとがった黒い帽子を付けて 見上げている。 一瞬ドアを開けたまま動きを止めたものの、犬養は 玄関に入るとジャケットの内ポケットを探った。 3センチ角ほどの小さな梱包された箱を、キナの広げられた 手の上に載せてやる。 「・・・え? ええ?」 両手でそれを受取って、待ちかまえていたキナが驚いた 顔をした。 恐らく、犬養が何も持っていない――というよりこの行事を 知らない――と踏んで悪戯を考えていたのだろう。 手に残ったちょっと高そうな包装の箱と、リビングに入っていく 犬養の背中を見比べて、キナも慌てて後を追う。 「あー、あの、犬養さん?」 「なんだ? お菓子が欲しかったんじゃないのか」 「そ・・・そうだけど」 そうじゃない。 とはキナには言えない。 キナの掌にも治まるそれを見ていると、複雑になりながらも 顔が緩んでしまうのが解かる。 悪戯してみたかった、と考えていたことは薄れ、気持がふわふわと して嬉しくなる。 「キナ」 そんなときに呼ばれ、顔を上げると犬養はジャケットをソファの背に 掛けてネクタイに指を入れていた。 そして振り返りながら、言ったのだ。 「Trick or Treat」 「・・・・・・・えっ」 驚くほど綺麗で流暢な声だった。 その意味をはっきりと理解するまで、日本人のキナは少し考えた ほどだ。 しかし理解して、さらに驚く。 頭が真っ白だった。 キナを見つめる犬養と、手の上の箱を見比べて、動揺する。 悪戯をすることだけを考えて、自分がお菓子を用意するなどと いうことはまったく考えていなかったのだ。 「何もないのか」 「あ、あー、えーっとっ」 何もない、という答えは犬養にも予想が付いていた。 「じゃあ悪戯していいんだな」 「あ、あの、ええとーっ」 戸惑ってうろたえるキナの身体を抱きよせ、顔を覗き込んだ。 「ま、まって犬養さんっ悪戯ってなにするの?」 「先に言ったら悪戯にならないだろう」 それはそうだ。 キナも納得しかけたが、なんだか背中に回る手がひどく 甘さを持っていてどんな悪戯なのか怖いようで期待して しまう。 「ここでしても?」 顔を近づけてくる犬養に、キナはくしゃりと泣きそうな顔になった。 「・・・だめ。ここじゃ、やだ」 「ならベッドだな」 「うー・・・」 犬養はキナを抱えるようにして、足元で大人しくしていた犬に 待っていろ、と飼い主らしく告げた。 この家で一番賢い犬は、その通りにするだろう。 「い、犬養さんのばかっ」 寝室のドアが閉まる前に、キナの怒ったような声が聞こえた。 「そんなに期待されるなら答えないとな」 からかうような犬養の声が聞こえて、ドアが閉まった。 頭に帽子をかぶせられたままの犬は、リビングのラグの上に 丸まりあのドアがもう一度開くまでゆっくりと待つことにした。 ****** 思いつきです。 ええと、拍手にコメントくださったかた、ありがとうございます! なのでハロウィンはキナと犬養さんでした。 何故犬養さんがお菓子を持っていたのか? そんな裏話も今度書いてみたいです。 これからもうちの子たちをよろしくお願いいたします! 近況。 寒いです。 寒いです。 背中に思わずカイロを貼っちゃいましたよ。今日は。 冬になるなぁ。 雪山行きたいなー PR |
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