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【2025/06/17 07:41 】 |
普通の男の初恋と失恋 1
「経理の岡という人は?」
大きな声ではなかったのに、柔らかな声はフロアに響いた。
総務部に入ったところにあるカウンタの向こうに現れた社員を、全員が見た。
注目を浴びたというのに、彼は全く驚きも動揺もしなかった。
スーツの胸元に下がる社員証を見なくても、誰だかわかった。
彼が知らない社員は大勢いるだろうが、彼を知らない社員はいないだろう。
海外事業部第二営業部課長、村瀬繕。
こんなに近くで見るのは初めてで、噂以上に格好良くて僕はドキドキした。
経理部の同僚たちの、羨ましそうな視線を受けながら近づいたのは、僕が岡だからだ。
「君か」
「はい」
何の用事か聞き返せず、ただ返事のみで終わったのは
確認して笑った村瀬に赤面しそうだったからだ。
必死で堪えると、短い返事になった。
そんな僕を気にするでもなく、村瀬は要件を言った。
「先週うちの部長の無茶な領収書を処理してくれただろう?」
「ああ」
僕は思い出して、村瀬が来た理由もわかった。
先週、彼のいう部長から回ってきた領収書は金額が高く、
普通に経費として処理するには難しいものだった。
ただ、入社してから総務の中にいる僕は、その回避方法をいくつか知っていた。
何度もあるようなら僕も受け入れはしないが、かの部長は初めてだった。
「悪かった。いつもならあんなものは出さないようにするんだが、
先週は俺もほかに解る奴も丁度出張でいなかったんだ」
営業部の接待費は様々だ。
時折高額にもなるが、彼らは経理に回る前に処理を知っている
しかし稀に、金額の高いものが回されてくる。
彼ら曰く、出さないように出来なかったものだ。
村瀬は正直に謝りながら真剣で、領収書一枚を処理することが
どれだけ大変なのか、経理の者の気持ちを知っているみたいだ。
他の部署の者にさえこうなのだから、彼の直属は、
彼の部下であることが嬉しくて堪らないだろう。
僕は焦って、迷って、声を潜めた。
「あの、大丈夫です。不都合なく処理出来ましたし、それに、先月の
専務の額に比べればどうってことなかったですよ」
カウンタに身を乗り出すように、内緒話をするように言ったのは、
彼は悪くないし、彼に謝られていることがひどく居心地悪かったからだ。
村瀬は一度瞬いて、それから笑った。
すぐ近くに座っていた女の子が真っ赤だ。
当然僕も、今度は自制が効かなかった。
こんなに格好良く笑う人を、僕は初めて見た。
「甘やかすなよ」
どういう意味だ、と聞き返す声が出なかった。
「お前みたいな優秀な奴がいると思うと、甘えてしまうだろ」
村瀬に甘えられる想像は全く出来なかったけれど、僕は緊張して何も言えなかった。
「何と読むんだ」
「え?」
村瀬の視線は僕の胸元に下りていた。
僕の社員証だ。
「あ、ヨシユキです」
岡与之幸。それが僕のフルネームだが、まず初対面で正確に呼ばれたことはない。
「与之幸」
「・・・・・ッ」
突然呼ばれて、息を飲んだ。
「助かった、ありがとう」
固まった僕を残したまま、彼は総務部を出て行った。
彼がいなくなった後で、僕が女性社員たちに質問攻めにされたのは言うまでもない。



*****

旭陽くんの試験を応援しようキャンペーン中。
繕と春則で応援したいと思います。
余所見せず勉強するように(笑

あと、春則がボロボロになる話も思案中。
ちょっと長い・・・ような気がするから時間かかりそう。
それから拍手用の二人も思案中。
あーこんなこと考えてる場合じゃないよね。
うん。
勉強せな!
でも試験より前日の女子会のほうが気になって仕方ない・・・
のは仕方ない。

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【2011/09/29 12:29 】 | SS | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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