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【2025/06/17 14:57 】 |
夢を喰う獣 5
楽しくてならないはずの部活だというのに、
貴弘は無気力に身体を動かしているだけだった。
同じように動いているように見えて、昨日までと
違うことは誰の目にも明らかだった。
「貴弘、どうした? 寝不足?」
「先輩に寝させてもらえなかったんじゃねーの」
心配そうに聞いた岡崎にかぶさるように、佐住がからかう。
この連休中、貴弘が夏流の家に泊まることは全員が知っていた。
貴弘は手にしたボールをじっと見つめた後で、
「・・・ううん、ちゃんと寝た。だって昨日は自分ちに帰ったし」
呟くような声は、しかしちゃんと全員に届いた。
「はぁ?!」
「ちょっと待て、だってお前今お兄さん旅行中だろ? ひとりだったのかよ」
仲間全員から詰め寄られる勢いで問われ、貴弘はただ頷く。
「なんで? ケンカでもしたのか」
でもケンカしても先輩が貴弘を放り出すとは考えられない、
と松島は心配そうに顔を覗き込んでくる。
貴弘はじっとボールを見たまま、少し考えて首を横に振った。
「ケンカ、じゃ・・・ないけど。夏流のとこにいる理由、ないから」
「どういう意味?」
聞かれて、貴弘は何と言っていいのか困惑した。
夏流が、貴弘を忘れた――一言でいえばそうなるのだが、
どうしてなのかは解らない。
貴弘は自分でもよく解ってない説明をして、それに質問をされて
答える形で、仲間に状況を理解してもらえた。
「つまり――先輩はお前のことじゃなくて、3年分の記憶がなくて、
たまたま日本にいた洋平さんが付き添ってる、てことだな?」
鹿内に要約されて、貴弘は頷いた。
「んで、理由は解らない、と」
佐住に念を押されて、もう一度頷く。
「先輩、階段から落ちでもしたん?」
そう聞いた岡崎は貴弘の前科を踏まえてのことだ。
「先輩が階段からって・・・猿が木から落ちるより難しい気がする」
複雑そうな顔で言った松島に、想像できなさそうな顔で
春杉が顔を傾けた。
「あ、んん? 階段から落ちたとか、いうんじゃないと思う・・・
外傷はないって洋平さんが言ってたし」
貴弘は夜にフォローのつもりで洋平からもらったメールの中身を思い出す。
一晩、様子を見て、病院へ行くかどうか決める、と教えてもらってはいた。
「それで、家にひとりだったのか?」
問われて、貴弘は頷いた。
兄夫婦は旅行中なのだから、当然だった。
しかし状況を知れば、友人たちがそのまま部活を
続けさせることは許さなかった。
合宿所でひとり寝てこい、とは言われないが、体育館の隅で
横になっていろ、と言われる顔を貴弘はしていたのだが、
どこかぼうっとしたままの貴弘に自覚はない。
1年生を放っておいて部活を中断していたのに、その下級生たちも
状況を詳しく理解しないまでも貴弘を気遣うように見守ってくれている。
そんなに、自分はおかしいのだろうか。
貴弘は言われるままにタオルで顔を隠し、ひんやりとした床に転がった。
夏流が自分を覚えてない――知らない、と言われて、あんなに
冷たい目で見て、洋平にはびっくりするくらいの笑顔で話す。
あんな夏流は、貴弘も知らなかった。
なんだかうまく自分が機能していないような気はしていた。
しかし、何がどうおかしいのか、説明するのは難しかった。



つづく

*****

いつまで続くのか・・・まだ続きます。

最初に結果報告。
去年の秋に受けた試験。

落ちました。

はーなんだかすっきり。
いや、悔しいけども、努力が足りないってことじゃね。
もう一回頑張ります。
はい。

そしていいことは、私の赤い子、帰ってきました。
台車は新しく、性能のよい子だとも思うけど、
やっぱり自分のが一番です。
これで雪道も凍てた道も全力で走ります!

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【2012/02/04 21:14 】 | 夢を喰う獣 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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