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【2025/08/14 14:10 】 |
王さまをやめる日 6

王さまが辞めると決めてしまわれた
ご生誕祭まであと一週間の日。
「王さま、ちょっとよろしいでしょうか」

王さまはお寝坊さんで、いくらいっても
早くに起きるということが出来ない。

なので王さまの行動はいつもお昼前からだ。

そう決められてしまって、もう随分経つ。
誰もがその調子に慣れてきているのに、
この先どうなるのだろうと私は不安になってくる。

いや、きっと新しい王さまは規則正しい王さまになって
普通の王さまと王宮になるだろうけれど。

でもそこにはもう王さまはいないのだ、と思うことが、
私は耐えきれなくてあまり考えないようにしていた。

いつもの起床より少しだけ早く、私は王さまの部屋を訪れた。

「ちょうどいいところに! これを見てくれ! ついに完成したんだ!」

まだ大きな天蓋の付いたベッドの奥で隠れるように
眠っているとばかり思っていた王さまは、元気いっぱいに
私に向かって大きな扇を見せてくださった。

「・・・なんですか?」

いやに早起きだ。

まさかとは思うけれど、まさか。

「孔雀の落とした羽を拾い集めて綺麗なものを
選んでひとつひとつ気持ちを込めて作った扇だ!」

そういえば数年前からそんなことを言って広大な庭にいる
孔雀の後を付いて回っていたが、
いまだそれが続いていたとは夢にも思わない。

「王さまでいるうちに完成して良かったよ。いや私は勤勉だからね? 
決めたことはやりとおすけどね?」

そうですね。

王さまを辞めると決めたこともどうやら
本当にやり遂げるつもりのようですし。

私は酷く痛みを覚える頭を抱えた。

「さあ、受け取ってくれ」

「私に?」

「そうだよ? 綺麗だろう?」

これを、私に?

私は驚いたけれど、受け取れなかった。

空いた時間で折った鶴とは違うのだ。

こんな気持ちを込められたものを頂いて、
私は毎日それを見て、どうしろというのだろう。


つづく
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【2010/12/27 12:15 】 | 王さまをやめる日 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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