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【2025/06/17 13:34 】 |
王さまをやめる日 7


「お前にあげようと思って頑張ったのに」

王さまは受け取らない私にむくれた顔をされたけれど、
私にも我慢出来ることと出来ないことがある。

王さまのいない王宮で、王さまに頂いたものを眺めて暮す。

私はそんな自分が想像できなかった。

王さまがいなくなった後、私はどうするのだろう。

胸にいっぱい広がった不安を押し殺すように、
私は朝早くに王さまを起こしに来た用事を告げた。

「そんなことより王さま、後宮の庭でちょっと・・・」

「ええ? まだ朝早いよ。私は徹夜明けなんだよ、
これからもう一眠り」

「徹夜されたのは王さまのご勝手ですが、
お仕事です! さあ早くお着替えください」

文句を言い連ね不機嫌な顔の王さまに着替えを渡し、
急き立てて衣服を整える。

毎日のことと思っていたけれど、これも考えればもう少しのことなのだ。

もっとゆっくり、ひとつひとつを忘れないように時間をかけてしまいたい。

しかしそうすると、王さまのいない場所で私は
王さまのことだけを想い暮すのだ。

それはなんて辛いことなんだろう。

王さまのいない場所で、王さまを忘れて暮すのか、
王さまを想い暮すのか。

どちらが苦しいことだろうと私は真剣に考える。

王さまの服を着た王さまは、誰より似合っている王さまだった。

一度も言ったことはないけれど、毎日見惚れているのが事実だ。

この先も言う予定はない。

また見惚れている私に王さまは振り返り、私は仕事を思い出した。

「それで、朝早くからなにがあったんだい?」

 

「噴水の水が止まってしまったそうです」


つづく
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【2010/12/28 12:13 】 | 王さまをやめる日 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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