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ウヅキをもう一度抱き上げ、床に座りその膝の上に抱える。
「何が嫌だった?」 涙を拭い、出来るだけ優しい声で問うと、泣いたことが恥ずかしいように、ウヅキは顔を背けようとする。 「な、なんでもないから、大丈夫」 「言っとくが、言うまで放してやらないからな」 柘植は子供のそんなごまかしを受入れるつもりなどない。 悪い大人だと知っているが、人の悪い笑みのままでいると、ウヅキは少し躊躇いがちにも諦めたようだ。 「・・・なんか、わ、わかんないけど、何となく、なんだ」 「何が?」 「・・・ナナさんと、ミチルさんが、一緒にいるとこ・・・考えたら、なんでか」 自分でもびっくりした、と無理やり笑って見せる顔は、幼いものに見えず、さらに柘植の心を苦しくさせる。 「・・・馬鹿だな」 そして熱くさせる。 その想いのまま、顔を寄せ唇を奪った。 最初から舌を潜り込ませ、荒々しく絡める。 少し戸惑っているような反応を奪うように、強く口腔を探る。 「ん・・・っふぅ、んっ」 来るしそうな呼吸が、艶を含んだものに変わるまで、柘植は止めなかった。 それからようやく唇を解放すると、濡れた唇と潤んだ瞳をした表情からは子供のものはなく、大人を惑わせる色香だけを纏わせていて、柘植を苦笑させる。 この変化は、もう誰にも見せたくない。 今までウヅキに触れた相手を想像すると、今でも凶暴なものが湧き上がる。 それを欲情に代えて、目の前の相手にぶつけてしまうのは大人げないと思いながら止められない。 そしてウヅキの感じた不安に、どこか暗い悦びを感じる。 「ミチルとは、友達みたいに飲んだだけだ。それに、お前に会いたくなって早く帰ってきたんだぞ?」 ミチルも長居するつもりがなかったのはよく解る。 お互い相手に捕まっているなと笑うしかない。 「ナ、ナナさん・・・」 少し驚いて、そしてさらに顔を赤くしたウヅキに、柘植はもう一度キスをした。 「もっと呼んでくれ」 そういえば、結局ミチルは柘植を名前で呼ぶことはなかったのだ。 少し幼さの残る声で、甘い声で、柘植はもっと呼ばれたい。 自分を求めてもらいたい。 この新しく、暖かく苦しい、複雑な感情を、抑えることなく発散したい。 「ナナさん、ナナさ・・・んッ」 縋るように伸びた手を背中に回させ、ラグを敷いた床に倒れ、深く絡んだ。 早くに帰ったお蔭で、夜は長い。 柘植はまた人の悪い笑みを浮かべた。 つづく 次はミチルのターン PR |
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