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【2025/06/17 11:53 】 |
王さまをやめる日 10

中に入ったとたん、私は硬直した。

一歩部屋へ入った私の横をドアが音もなく閉まっても、
私は動けなかった。

大きなソファは王さまのお気に入りだ。

そこにいつものように座る王さまに、いつもはいない男が二人。

覆面をしたテロリストだった。

両手で持つ銃を構え、一人はその先を王さまの頭に向けている。

室内の三人から見つめられていたけれど、
私は王さましか見えなかった。

しかしいつまでもこうしていても状況は変わらないのだ。

私は何度か大きく息を吸い込み吐き出し、
震える声をなんとか抑えて口を開いた。

「要求は・・・なんですか。何でも伺いますから、
とりあえずその銃をおろしてください」

「我々の目的はひとつ」

王さまに銃を向けた男が言った。

覆面をしているせいか、くぐもった声になっている。

「この国の政治体制を変える。そのために、
我々は立ち上がった。国の未来を憂う憂国集団だ」

憂国?

国の未来?

王さまの頭に銃を向けておいて、
いったい何を言っているんだろう。

私はテロリストの言葉を馬鹿げているとしか思わなかったが、
王さまの命が晒されている今、相手を挑発するのはまずい。

私は一度頷いた。

「この国を想うあなた方の気持ちは解かりました。
けれど武力をもって改革を行うのはどうかと思います。
今は良くとも、後々何かが起こったとき、また武力に
頼ることになる。それでは国は成り立ちません。
話し合いの席を設けましょう。それでも誰かが
血を流さなければならないというのなら、私にそれをお願いします」

一度も揺らぐことなく、私は言い切った。

この言葉に何の偽りもない。

王さまが王さまでなくなるのであれば、
その後の国がどんな体制だって構わない。

だけど王さまが殺されることを考えたら、
私はその前に死んでしまいたい。

倒れる王さまなんて、見たくないのだ。

もう一人のテロリストが私を真っ直ぐに見詰めた。

「この王は、明日引退するのに、命を守るのか?」


つづく

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【2011/01/08 12:17 】 | 王さまをやめる日 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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