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【2025/06/17 07:45 】 |
王さまをやめる日 11

テロリストが王さまのことを知っているのは驚いたが、
私には別の気持ちで溢れかえっていた。

明日で王さまは王さまを辞める。

だからといって、王さまがこの世から
いなくなってもいいということにはならない。

いや、むしろ、王さまでなくなったらいなくなるというのなら、
私は玉座に縛り付けてでも王さまには王さまでいてもらう。

「王さまは必要な方です。誰よりも必要な方です」

「誰にとって必要なのだ。王でなくなるのなら、
ただの男になるだけだろう」

「この男がこの国を腐敗させたのだ。王だからな。
我々はこの男を見せしめにもしなければならない」

テロリストから次いで言われて、
私は目の前が真っ赤になった気がした。

「必要なんです! 生きていくために! 王さまでなくなっても、
いつどこで何をしていても、どんな風に生きていようとも! 
私が生きていくのに、王さまが必要なんです!」

この気持をどうしたら解かって貰えるのだろう。

王さまが王さまであることが大事なのではない。

私にとって誰よりも大事な方が、何より大切な王さまなのだ。

「銃を下してください。私に向けてください」

目が熱い。

泣いてなどいられないと思ったのに、感情が高ぶってしまっている。

王さまを見ると、銃を向けられているというのに
満面の笑みで私を見ていた。

王さま、状況を解かっていらっしゃいますか?

どうして殺されようとしているのに、そんなに嬉しそうなんですか。

「ほら、言ったとおりだろう? この子は私が貰って行くよ」

王さまは笑顔のまま、テロリストに話しかけた。

王さまに銃を向けていないテロリストが
覆面のまま天を仰ぎ、大きく息を吐いた。

肩を下ろし、お手上げだ、というようなポーズだ。

「まったく、こんな王のどこがいいんだお前は」

「すべてに決まっているじゃないか、ねぇ?」

テロリストと王さま、二人から言われたのは私だ。

いったい――どういうことだ?

私は変化した状況に、今度こそ頭がついて行かなかった。



つづく
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【2011/01/15 12:42 】 | 王さまをやめる日 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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