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【2025/06/17 07:06 】 |
王さまをやめる日 14

「気持ちとか、王さまのいう通りとか、勢いだとか、
それは私のことなんですか?」

正直ちょっと、勝てると思わないのは
三人のそろった上背のせいかもしれない。

だけど私も負けるわけにはいかない。

なぜなら王さまの言葉が、私を動揺させるからだ。

「貰う」というのは、いったいどういうことなのだろう。

私はどうなるのだろう。

不安も入り交ざった気持ちに、王さまは世界に何の異常も
起こっていないかのようににこやかに笑われた。

「私が王を辞めたあとで、お前だけここに残っていても
仕方ないだろう? 連れて行くことにしたんだよ」

どこへ。

王さまの突拍子もない発言に、私は混乱して
意味もない質問を返してしまった。

呆然としたままの私に、王さまはやっぱり変わらない顔で答えられた。

「どこへでも。だって私は自由になるのだから」

「自由になるのは明日の式が終わってからだ」

「最後まできっちりと仕事をしてもらわなければ
こっちが成り立たないからな」

にこやかな王さまの隣で難しい顔をする兄と
王さまの双子の弟は、王さまのことも呆然としたままの
私のことも気にしていないようだった。

ひとしきりまた三人で言い合った後で、
王さまはゆっくりとソファから立ち上がられた。

「さて、今頃混乱して右往左往してる五老院たちに説明してくるかな」

「きっと盛大に慌ててくれることだろう」

「しわくちゃジジィ共の歪んだ顔はさぞ見ものだな」

いつもは王さまに小言を言ったり自分の欲を
満たしたりするだけの五老院たちを、私はこの三人の
人の悪い笑みを見て少しだけ同情した。

三人は私を置いて部屋を出て行かれようとしたが、
見送るしかできなかった私を振り返り、

「お前を騙す形で悪かったけど、お前の気持ちが
固まっているのなら俺は反対しないよ」

私の頭を撫でて言ったのは兄だ。

「お前が優秀な小姓だということはよく聞いている。
このふざけた男に飽きたらすぐ俺のところにおいで」

兄と同じところを撫でて言ったのは王さまの双子の弟だ。

「遅くなるけれどここへ帰ってくるから、
待っていておくれ。明日を一緒に迎えよう」

私の頬を掬うようにして顔を上げ、耳に口付けと一緒に
囁いたのは王さまだ。

あまりにたくさんのことがありすぎてまだ混乱から
戻らない私は、いったい何を言われたのか理解することが
出来ずそのまま王さまたちを見送ってしまった。

そしてドアが閉じられ、王さまの自室に何の音も
聞こえなくなってからじわりと体温が上がり、
それからようやく頭が理解した。

全身が沸騰してしまうかと思った。


つづく

 

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【2011/01/18 12:18 】 | 王さまをやめる日 | 有り難いご意見(1) | トラックバック()
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有り難いご意見
無題
総受けか?!
うらやましすぎるぞ……!
【2011/01/18 19:18】| | 旭陽 #8d41650655 [ 編集 ]


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