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【2025/06/17 18:27 】 |
王さまをやめる日 3


驚いたことに、王さまの「王さまをやめる」ということは
瞬く間に王宮に広まり、それまで連日寄せられていた
縁談がぴたりと止んだ。

独身のままの王さまは、広い後宮に結局最後まで
誰ひとりの女性も入れないまま終わってしまうようだった。

本当なら、来月の生誕祝いの時に相手を決めて
欲しかったのが五老院の思惑だったのだろう。

王さまを補佐し、奉りごとを取り仕切る五老院の方々は、
その権力争いは熾烈なもので、今度は王さまが誰を後継者に
選ぶのか必死に選別していることだろう。

「王さま、次の王さまはどなたなんですか?」

王さまはお生まれになったときから複雑な状況に囲まれた方だった。

王さまがお生まれになったとき、おひとりではなかった。

双子のご兄弟でいらっしゃったのだ。

しかし後々、同年のご兄弟は諍いのもとになると周囲に言われ、
王さまのお父様は産まれたばかりの王さまの弟さまを
消してしまわれたのだ。

王さまのお父様はご高齢であったせいか、
王さま以外にお子様はいらっしゃらないままだった。

従姉の方々はいらっしゃるが、どなたも女性ですでに
ご成婚されている。

王さまはご結婚されていないので、嫡子もいないままだった。

確実なお血筋の方がいらっしゃらない以上、王さまの中に
誰かがいらっしゃるのだと思うのだが、私には想像できない。

王さまは決めてしまわれれば何を言っても無駄なので、
私は王さまが王さまをやめるとおっしゃったことに
反抗するのを諦めて、とりあえずまだ王さまは王さまなので、
いつもの生活をすることに決めた。

「やめる時に言うよ」

「それまで秘密なんですか? でもお血筋からいくとどなたも・・・」

「確かな人がいるよ」

王さまは自信満々に笑われる。

「きっと私なんかよりも、立派な王さまになるだろう」

王さまは誇らしげだった。

 

でも私には、頷くことは出来ず、かと言って何を言うことも
出来ず、ただ俯いて暗澹とする気持ちを抱えているしかなかった。


つづく
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【2010/10/27 12:13 】 | 王さまをやめる日 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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