「それで良かったのか?」
「あんた、本当に金しかださなかったくせに」
「俺が選んだものを尽く却下したのは誰だ」
「あのなあ、フルーツとか、生華とか、
んなもん誰だって贈れるだろ?」
しかも華とか、手渡しに意味があるんだぜ。
春則が呆れた口調になるのに、繕はまったく
気にしないように煙草を咥えるだけだ。
貰ったチョコレートのお返しに、と用意したのは春則が選んだ
カジュアルなアクセサリーで、繕からすると納得しかねるものだった。
「会社の義理チョコに返すんじゃないんだ。
個人なんだから相手のこと考えて選ぶのが普通だろ」
「そうか? ならどこかのブランド物のほうが良かったんじゃないのか」
「普段に! 使ってもらえるものにしたかったんだって」
ふうん、と適当な相槌を打つ相手に、春則はもういいと
先に会話を終わらせて買ったものを送る手配をした。
店を後にして、申し合わせたわけではないが
二人並んで歩くと、どうしても人目を引いてしまう。
しかしお互いに慣れたもので視線を堂々と受け止めて歩調を緩めない。
「似合うといいな」
ぽつりと繕が零した声に、春則はフォローのつもりかと苦笑した。
「趣味のいい人だから、どんなものでも使ってくれるよ」
「へぇ、ずいぶんかってるな」
「まぁね」
「そんなに仲が良かったか」
「――妬くなよ」
口端だけで笑うような春則の声に、繕は短くなった煙草を
携帯灰皿に押し込んだ。
「妬いて欲しかったのか?」
「あんたの嫉妬なんていらねぇよ。この間の据え膳だって食ったくせに」
「妬くな」
お返しとばかりに同じ言葉を返す繕に、春則はふんと呆れただけだ。
「仕事は」
前方に駅が見えて、平坦な声で訊いた。
「来週からNY」
「あんたも大変だな、この時期に」
「別に」
繕は前方を見たままで、平坦な声で返す。
「どんな時だろうと、目の前にある仕事をこなすだけだ」
その答えを、春則は知っていて、やっぱりなと肩を竦めた。
「じゃあまぁ、今日は帰るか」
「用事はこれだけか?」
「これだけ。あとは無事着くように祈ってろ」
「なんに祈るんだ」
訊き返されて、春則は答えを探した。
なんに祈るのだろう。
当然のことながら、神や仏をこの男が信じているとは思えない。
誰かに頼るとも思えない。
暫く考えたが、出てきた答えは無難なものになった。
「・・・運に、かな?」
繕は駅の敷地内に入ったことで、もういいだろうと何かに
許可を得て煙草を咥えた。
火を付けてその紫煙が風に乗るのを追いながら、低く呟いた。
「・・・運か」
「そう、運だ」
春則は改めて納得したように、もう一度言った。
「運だけで生きれる奴はいないが、運なくしてなにかを
成し遂げることも出来ないってさ」
自分で名言だ、と呟きながら駅への流れに乗る春則を追いながら
繕もその波に呑まれていく。
「誰の言葉だ?」
「さーどっかで聞いたか読んだか・・・とりあえず、世界のどこかの
エライ人の言葉」
「まったくありがたみのない言葉だな」
「うるさい」
二人のいつもの会話も、そのうちに波に消えていった。
****
無事!
WDのお返しが届いたようでなによりでした、透子さん!
もっと時間がかかるかと思ったけど、結構長い間
箱の中に入ってたからお花が潰れてなかったかしら・・・
それが心配。
あ、それから。
旭陽くんは、透子さんに呆れられてないと思っていたそうです。
私も旭陽くんは好きですが。かわいいと思ってますが。
あの子と長く付き合っていると、絶対に、呆れてしまうことに
なるんですよ・・・いや、本当に。
悪い子じゃないよ。
悪い子じゃないけど、世の中自分が思った通りに回ってくれない
なんて言うあたりとっても不思議な子です。
また、叱ってあげてくれませんかー
私はもう諦めました。
あの子、まだ私になんにも送ってないんですよ!(笑
と、ここにバラす。
くれなきゃ返せないじゃんねー
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