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「風の中の女」 北方謙三 著 前回、仲間となった美有と吉尾、水田、それに関島グループ総帥と 結婚した野木路子。 路子の下に残らなかった美有はひとりでデザイン事務所を立ち上げ 独立した。 八百屋の改装、ラブホテルの内装など細々としながらもがむしゃらに 仕事をしてきた美有。ようやく従業員をひとり増やせるほどになった、 あれから二年半後、真面目に生きていた美有はまたトラブルに 巻き込まれていく。 そんな中身。 前回、吉尾と水田がどれほど犬猿の仲かっつーのを書いてません でしたね。吉尾は嫌煙家、水田は愛煙家。 几帳面というか神経質な吉尾に対し、おおざっぱな水田。 性格も合わなければやってることは似てるのにそのやり方が 気に入らないもの同士。同族嫌悪か? とか思うくらいなんだけど、 気に入らないけど信用しているから同じ場所にいられる、そんな 二人。 水田がどれくらいおおざっぱかというと、「部屋全体が灰皿だ」と なっちゃってるとこ。そんな彼の縁を切った叔父が氏家のおじさま。 元警察官の頑固系じじい。だけど好きだー。 今回は、必死に真面目にしていた美有の仕事に、急に妨害が 入り始める。それをそているのがどうやら吉尾だと解かったとき、 美有は嫌な予感になりながらも誰にも屈しないことを決める。 路子の下で上昇志向の高かった吉尾は要領よくトップへと 昇り始める。 一方水田は、組織の中でのやり方がどうしても合わず、ひとり 抜けてまた「なんでも屋」を始めていた。 美有は何故今更妨害に合うのか、自分が巻き込まれている 原因が解からず憤るが、路子に会いその理由を知り、さらに 怒りを覚える。 路子の傍で守られることを厭い、美有は誰の力も借りず 自分の仕事をやり抜くことを決めるが、そんなときたった ひとりの従業員が美有の代わりに殺されて―― 美有の怒り、悲しみ、全てが敵となった吉尾に向けられたが 吉尾にしても第三者を死なせてしまったことに戸惑い、 ひとりで事件を背負うように吉尾も闘うことを決めたが、 美有に重要な証拠だけを託し、吉尾は殺される。 もう嫌だ、と美有は崩れる代わりにどこか神経が麻痺し、 路子の傍で守られることを嫌いひとりで闘うことを決めた。 そこで登場したのが路子の主人となった関島グループ総裁の 甥である、野崎通だ。 「人間研究科」という名前を掲げる探偵業で、司法試験に通り ながらも好きな女を死なせて自棄になって素手で人を殺して しまったという過去を持つ男。 傍若無人で傲慢で唯我独尊に振る舞うこの男、もちろん 美有は気に入らない、と一切相手にしないが、事態が動くに つれ野崎のほうが焦り始める。 美有の命が危ないと判断するや野崎の動きは素早い。 んでもって、 「守りたい」 とか言われちゃったらぎゃーとなるでしょう?! 「お前に惚れそうで怖い」 とかなんだよ!! どんだけ素直で格好いいんだ野崎! そんな野崎に惚れられちゃった美有。 彼女自身がすごく格好良い女であることも間違いない。 ラストシーンはここでは黙っておきたい。 だって読んでニヤリとしてほしいもん!! 好きだなぁ美有。 そして野崎。この二人はまだまだ続くよ。 次回は野崎編でお送りしたいと思います。 PR |
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「雨は心だけ濡らす」 北方謙三 著 ハードボイルドは男だけのもの――って思ってませんか! 女だって闘うんです。強いんです。したたかなんです! 北方さんには珍しい女性が主人公のハードボイルド。 でもだからって中身はやっぱり北方さんなんです! かぁっこいい! 主人公は女らしく、揺れたり泣いたり怒ったり笑ったり 感情に大きく揺れるけど、でも強い! デザイン事務所に勤めるインテリア・デザイナーの美有。まだまだひよっ子 の美有にある日、憧れの建築家である野木路子との仕事が入る。 野木の下で必死に自分の力を出そうと頑張るのに、なぜか仕事に妨害が 入り果ては監禁されたり怪我をしたり。 野木の仕事の背景には美有が想像もしてなかった大きなものが絡んでいて 知らないうちにそれに巻き込まれていた。 インテリアの仕事だけをするはずだったのに、美有は否応なしにそれに 巻き込まれて――いや、その渦の中心になるほど強くなる。 初対面から嫌な感じのトラブルシューター吉尾、 美有の助手のはずなのに本当は何でも屋の水田、 彼らと一緒に美有は誰より強く闘う。 そして看板職人の津井のおじいちゃんは癒しだ。忘れてはならない。 普通の女として生きてきた美有が、この事件で誰よりも大きくなったのは 最後に解かることだ。 犬猿の仲だった吉尾と水田が、最後に自分たちの馬鹿さ加減に笑い合う のも好きだ。 結構スカっと爽快に終われるのは、美有の性格が好きだからだと思う。 しかしながら、読み切りのこの一冊、次があります。 実は面白くなってくるのが次の中盤からなのだ!!! 私の心をさらに掴んで離さなくなるヤツが出てくる―― 吉尾、水田! 紳士協定なんて結んでる場合じゃないよ!! と、次へ続く。 |
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「波王の秋」 北方謙三 著 武文・・・・・・・ッ!! 口を覆って涙が零れそうじゃーーー。 そんな始まりではないのですが、まず、胸を突かれるのが、 柏武文と言う雄雄しくも死んだ武士でした・・・ 時代は南北朝。主人公は小四郎。上松浦党の後継者として育てられたけれど、 時を待って「波王」となり独立した水軍を作り上げ日本を守るため、 元と戦う――んですが!! 海です。 苦手な海です〜〜〜 戦いのシーンは海戦が主。 苦手なはずなのに、文字を追うだけで頭の中に映像が広がる・・・! ちなみにこれ、「秋」は「とき」と読みます。 北方小説では当然のように出てくる単語です。覚えましょう(笑 北方さんのハードボイルドは、基本的に一人称だ。 以前何かで読んだけれど、「バードボイルドは一人称でなければ 一人前じゃない」なのだとか。 それは深く頷けるほど、巧い。 主人公の思いや行動ひとつで、周囲の様子が 全て分かるというのは半端じゃないと思う。 けれども、この歴史小説たちは・・・各章、各節ごとに視点が変わる。 だから物語の進みも速く、そしていろんな男たちが格好良いってことを、 また周囲からの目で見れて、やっぱり格好良い!!! と断言できる素晴らしい手法(笑/そんな意味はないと思うけど) 小四郎は、海と共に生きてきたけれど、 時代の波に乗って「波王」となり、「波王」として戦った。 この物語のラストで、戦いを終えた小四郎は「波王」を辞めて一人の男に戻る。 それを誰もが惜しいと思いつつも、今までの小四郎の人生は 周囲の人間のためで、それをやはり知っているから、誰も止めることは出来ない。 唯一、一緒にその旅に出ることが叶った波多裕が私はとても羨ましい!! |
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「陽炎の旗」 北方謙三 著 続編です。「武王の門」の。 あのラスト、未来があるようで、それは確かに光なのかどうなのか―― 確かめるべくした一冊。 主人公は、足利直冬(尊氏の息子)の息子である頼冬。 しかしその出自は秘められ、来海の養子として育てられていた頼冬が、 元服するときに自分の血を知った、と言うところから人生が歪み始める―― その血ゆえ、刺客に追われるようになった人生で、来海から出奔し放浪の道を選びつつ、 しかしどこでも刺客の手は追い続けてくる。その途中で出会ったのが、竜王丸という若者だ。 竜王丸は月王丸の息子で、月王はそう、前作「武王の門」の懐良の一子。 つまり、尊ぶべき血筋の若者で、けれど頼冬は己の血とただ流れる人生に どこかひねた目で見て流れに任せるところがあったので、 それをまずどうしようとは思わない。 そこに絡むのが、周囲の大人や権力を欲するものたち、 勝手に夢を見たいと語るものたちで。 頼冬は変わり行く情勢の中で、ただ流れるままに一番第三者であったように見える。 しかしその宿命を背負わされた血を呪わずにはいられず、 周囲に乗せられて御輿に担ぎ上げられるがやはり、 その手で血を断ち切る――最後に惚れる人物だ。 とてもあの直冬の息子とは思えぬ!! 育ててくれた養父に感謝☆したいところ。 前作、「武王の門」でまだ子供から成長していた月王が、 これには何か力を持つ大きな存在として現れる。 前を知っている分、「なんだよオトナぶっちゃって☆」と思わないでもない(笑) その息子である竜王は、さらに幼く見えて、これはもう、祖父である懐良親王が 大きすぎた、と思うしかないような気がする。 九州を統一したその力、懐良と武光の二人は深くまだ心に残るものがあるようだ。 でも秋野は、ここで語るのもなんだが、前作ラストで幼きころから 懐良の影としていつも傍にいた頼治という男が今も気になる・・・ 怪我を負い、病を得ても最後まで生きていてくれたことに秋野はほっとしているの だけれど、療養するように懐良に言われ袂を別れ・・・どうしていたのかな、とか。 この本編でのラストは、まだ若々しい竜王が、 一度きりの夢を実行した月王が高麗に落ち着いたのを機に、 荒っぽい未来を開こうとして、それに頼冬が乗る、という形で終えている。 それがどうなるのかは、また不安と淡い期待を残す北方さんに 秋野はまだまだ目が離せなくなるのでした。 追伸。 昨日久しぶりに方向音痴のなんたるか、を再確認いたしました・・・ 高速の分かれ道でナビがコワレててどっか解かんないところを 示していたせいで右か左か・・・・で、左を選んだら!! 間違えた。 うーむ。有料道路で道を間違えるとすごい悲しいね! |
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「武王の門 下」 北方謙三 著
レビューと称するのに、これじゃあ本当に秋野の感想でしかねーよ、と思うのだが、 これはもう、手にとって読んでください、としか・・・・(意味なし!) 歴史の年表を開けば、懐良親王という人物は呆気なく短く書かれているのかもしれない。 けれども、そこに確実に夢と夢を追って生きた事実があったのだ、と 思うだけで読んだ後もこうして手が震えるほどだ。 北方さんには、ブラディドールでヤラれたけれど、この歴史小説で二度目に撃たれた。 それくらい衝撃のある本である。 この作中、歴史の流れで舞台は九州だけれど京では足利一族が 尊氏と直義の兄弟の争いに発展していて、物語の途中ですでにどちらも果てている。 なんつーか、そこでもやっぱり尊氏には秋野は 心が動かされなかった。憎たらしいと思った直義だが、 その最後や人生には改めて考えるところも出てくる。 基本的に―――好きじゃないみたいだ。足利尊氏くんが。(余談でしたね) |
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