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「気持ちとか、王さまのいう通りとか、勢いだとか、 それは私のことなんですか?」 正直ちょっと、勝てると思わないのは だけど私も負けるわけにはいかない。 なぜなら王さまの言葉が、私を動揺させるからだ。 「貰う」というのは、いったいどういうことなのだろう。 私はどうなるのだろう。 不安も入り交ざった気持ちに、王さまは世界に何の異常も 「私が王を辞めたあとで、お前だけここに残っていても どこへ。 王さまの突拍子もない発言に、私は混乱して 呆然としたままの私に、王さまはやっぱり変わらない顔で答えられた。 「どこへでも。だって私は自由になるのだから」 「自由になるのは明日の式が終わってからだ」 「最後まできっちりと仕事をしてもらわなければ にこやかな王さまの隣で難しい顔をする兄と ひとしきりまた三人で言い合った後で、 「さて、今頃混乱して右往左往してる五老院たちに説明してくるかな」 「きっと盛大に慌ててくれることだろう」 「しわくちゃジジィ共の歪んだ顔はさぞ見ものだな」 いつもは王さまに小言を言ったり自分の欲を 三人は私を置いて部屋を出て行かれようとしたが、 「お前を騙す形で悪かったけど、お前の気持ちが 私の頭を撫でて言ったのは兄だ。 「お前が優秀な小姓だということはよく聞いている。 兄と同じところを撫でて言ったのは王さまの双子の弟だ。 「遅くなるけれどここへ帰ってくるから、 私の頬を掬うようにして顔を上げ、耳に口付けと一緒に あまりにたくさんのことがありすぎてまだ混乱から そしてドアが閉じられ、王さまの自室に何の音も 全身が沸騰してしまうかと思った。 PR |
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王さまの双子の弟は、命を取らないまでも 王宮にそのまま居続けると本人の知らないところで 勝手に何かの駒にされかねない雰囲気だったので、 王さまのお父上はひっそりとその存在を消すことにされたそうだ。 王さまの双子の弟は、自分の出自を知りながら 王さまはそれを知っていたし、 繋ぎ役は、もちろん王さまの乳兄弟で幼馴染でもある、兄だ。 王さまの双子の弟が生きていたことは納得できた。 しかし、だからといって今のこの状況が納得できるかといえば、否だ。 私は年上の三人をまっすぐに見つめた。 全身から怒りのオーラが出ていたのは、仕方のないことだろう。 「それで、その弟さまが、どうして兄と一緒に 納得できる説明をもらうまでは決して誤魔化されるものか、と 「インパクトがあるだろう?」 それで、澄ますお積りだろうか。 本気で、と私がいっそう強く睨んでも むしろ兄と王さまの双子の弟のほうが心配そうな顔をしただけだ。 「それより、この子の気持ちを確かめたら、 「それは・・・」 「いや、勢いで言っただけかもしれない。もう一度確認したほうが」 年上の三人は、私のことを言っているようだが いったい何が、どうしてこの状況なのかまず最初に説明を |
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どういうことだろう。 質問する目をいったいどこに向ければいいのか一瞬解らなかった。 なにしろ銃を向けられた王さまと銃を持ったテロリストが 私を「お前」と呼ぶ気安い雰囲気を持つテロリストは、 私は素顔を見て、テロリストが王宮を襲ったと聞いたときより目を開いて驚いた。 「――兄さん?!」 片眉を上げて苦笑する顔は、最近会うことも少なくなったけれど そして王さまに銃を向けていたテロリストもそれを肩に上げ、 その素顔に、私は開いた口が閉じることが出来なかった。 最初から最後までソファで寛ぐ、王さまそっくりだったからだ。 服装はテロリストそのもので、髪も少し長めだしどちらかというと 私は息が止まるほど驚いたものの、必死で頭を働かせる。 王さまと同じ顔だ。 考えて、ありそうな事実はひとつしかない。 産まれてすぐに存在を消されたという王さまの双子の弟だ。 しかし私は今まで王宮で、王さまの弟が ただ似ているという、まったくの他人なのだろうか。 動揺に揺れるも、その考えが真意でないと私は 「まさか――」 嗄れる声で確かめようとすれば、王さまがとても楽しそうに笑われた。 「あの優しい父が、自分の子供を本当に殺すと思うかい?」 私は王さまのお父上を間近では知らないけれど、 |
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テロリストが王さまのことを知っているのは驚いたが、 私には別の気持ちで溢れかえっていた。 明日で王さまは王さまを辞める。 だからといって、王さまがこの世から いや、むしろ、王さまでなくなったらいなくなるというのなら、 「王さまは必要な方です。誰よりも必要な方です」 「誰にとって必要なのだ。王でなくなるのなら、 「この男がこの国を腐敗させたのだ。王だからな。 テロリストから次いで言われて、 「必要なんです! 生きていくために! 王さまでなくなっても、 この気持をどうしたら解かって貰えるのだろう。 王さまが王さまであることが大事なのではない。 私にとって誰よりも大事な方が、何より大切な王さまなのだ。 「銃を下してください。私に向けてください」 目が熱い。 泣いてなどいられないと思ったのに、感情が高ぶってしまっている。 王さまを見ると、銃を向けられているというのに 王さま、状況を解かっていらっしゃいますか? どうして殺されようとしているのに、そんなに嬉しそうなんですか。 「ほら、言ったとおりだろう? この子は私が貰って行くよ」 王さまは笑顔のまま、テロリストに話しかけた。 王さまに銃を向けていないテロリストが 肩を下ろし、お手上げだ、というようなポーズだ。 「まったく、こんな王のどこがいいんだお前は」 「すべてに決まっているじゃないか、ねぇ?」 テロリストと王さま、二人から言われたのは私だ。 いったい――どういうことだ? 私は変化した状況に、今度こそ頭がついて行かなかった。 つづく |
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中に入ったとたん、私は硬直した。 一歩部屋へ入った私の横をドアが音もなく閉まっても、 大きなソファは王さまのお気に入りだ。 そこにいつものように座る王さまに、いつもはいない男が二人。 覆面をしたテロリストだった。 両手で持つ銃を構え、一人はその先を王さまの頭に向けている。 室内の三人から見つめられていたけれど、 しかしいつまでもこうしていても状況は変わらないのだ。 私は何度か大きく息を吸い込み吐き出し、 「要求は・・・なんですか。何でも伺いますから、 「我々の目的はひとつ」 王さまに銃を向けた男が言った。 覆面をしているせいか、くぐもった声になっている。 「この国の政治体制を変える。そのために、 憂国? 国の未来? 王さまの頭に銃を向けておいて、 私はテロリストの言葉を馬鹿げているとしか思わなかったが、 私は一度頷いた。 「この国を想うあなた方の気持ちは解かりました。 一度も揺らぐことなく、私は言い切った。 この言葉に何の偽りもない。 王さまが王さまでなくなるのであれば、 だけど王さまが殺されることを考えたら、 倒れる王さまなんて、見たくないのだ。 もう一人のテロリストが私を真っ直ぐに見詰めた。 「この王は、明日引退するのに、命を守るのか?」 |
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